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目が覚めたら横に初号機が寝てたスレ

1 :とっちゃん:02/11/10 21:00 ID:lYIPQNUC
助けて〜横で暴走してる〜(泣


2 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 21:03 ID:???
>>2
ユイさんと考えれば同という事はない

3 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 21:03 ID:???
2geeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeet

4 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 21:03 ID:???
>>2
まちがった>>1

5 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 21:03 ID:???
ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン

6 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 21:32 ID:???
>>1
> 助けて〜横で暴走してる〜(泣

> 目が覚めたら横に初号機が寝てたスレ

寝てるのか暴走してるのかはっきりして下さい。
それとも寝ながら暴走?


要するに寝相が悪いのか??

7 :死期:02/11/10 21:42 ID:FK80Lz96
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!


8 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 21:53 ID:???
>>1
まずいって、マジで。
早く逃げて〜!

9 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 21:55 ID:???
つーかとっちゃんって誰よ

10 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/10 22:39 ID:???
黒柳徹子だろう

11 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/11 03:00 ID:???
それはトットちゃんだろ!

12 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/11 05:46 ID:???
寝床で暴走する初号機ハァハァ

13 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/11 13:38 ID:???
初号機、活動限界です!

14 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/11 16:42 ID:???
>>6に惚れた。

15 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/23 01:27 ID:???
ここ、誰かいますか…?
いなけりゃ借りていいですか…?

16 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/24 13:32 ID:???
一日半経過…大丈夫みたいですね。
では、しばらくお借りします。

17 :ひとりあそび・1:02/11/25 02:04 ID:???
 「もう、いいのね」

頭が海面を抜けた。
波が揺れ、全身が大きく揺さぶられる。
途端にめまいがして、吐き気がこみ上げた。LCLを吐く。
体温と同じ暖かさの塊が抜け、肺に冷たい空気がどっと流れ込んできた。
咳き込む。何とか海面に頭を出そうともがく。
沈んでも溺れないと思えば、泳ぐのはそう難しいことではないとわかった。
でも岸はどこにも見えなかった。
しばらくは適当に見当をつけて泳いでみたが、やがて疲れきってしまった。
だるくなった身体から力を抜いて、仰向けに海面に浮かんだ。
星が見えた。
怖いくらいの星が空いっぱいに光っている。
前にも何回か、こんな人工の光に邪魔されない星を見たことがあった。
どちらもエヴァに乗っている時だった。隣には他のヒトもいた。
涙が、出た。
まだ泣けたのかと思う。何だか嬉しかった。これなら、誰かともう一度会えても
大丈夫だ。きっと、今度は怖がったりしない。大丈夫…
と、頭が何かにぶつかった。
びっくりして顔を上げると、巨大な像が海の中に立っていた。あの白いエヴァだ。
恐る恐る上を見たが、首の辺りは暗くてはっきり見えなかった。
まだ怖いのか、とおかしくなった。身体はガクガク震えていたけど。
海中に突っ立っている脚の向こうに、遠く浜辺が見えた。
彼は少しだけ躊躇してから、そっちに向かって泳ぎだした。

18 :ひとりあそび・2:02/11/25 02:41 ID:???
「…あれ」
目が覚めると固い地面の上に横たわっていた。
手で地面をさぐる。さらさらした手触り。爪の間に何か入り込んできた。
片手を上げると、指の隙間から白い砂がぱらぱらこぼれ落ちてきた。
砂浜に寝ているらしい。
いつの間にかさっき見えた浜辺にたどりついて、そこで力つきて眠ってしまったようだった。
空は相変わらず降るような星空だった。あれから、多分そんなに時間は経っていないのだろう。
身体がまだ疲れきっていて、起きあがる気はしなかったが、とりあえず手や足を動かしてみる。
その瞬間、全身を震えが走った。
さっき持ち上げたのと反対の手に、誰かの手を握っている。あまりにも手の中にしっくりと馴染んで
いたので、改めて手を動かすまで気がつかなかったのだ。その手は力なくこっちに握られていた。
彼はしばらく真上を見たまま固まっていた。
誰なのだろう。
頭の中をいろんな顔がよぎる。どれも彼を救い、そして脅かしてきた顔だ。その中の誰が横にいても、
正直怖くてたまらなかった。さっきはあんなに安らかな気持ちで、他人を受け入れられると思ったのに。
もしあの子だったら。あの人だったら。不安ばかり募る。
どう声をかければいいんだろう。それに、向こうが受け入れてくれなかったら。
また、嫌われたら。
いらないって、言われたら。
波の音が静かに打ち寄せ、見えない海の中へ戻っていく。その音すら強迫するように聞こえる。
早く決めろ、どうするんだ、また逃げるのか。手を離すのか。
…違う。
首を振った。拒絶されるかもしれない、でも何もしないよりはいい。
彼はさんざん迷った挙げ句、思い切って手の持ち主を、見た。
息が止まった。
「え…」
間抜けな声が出た。
そこには人間とほぼ同じくらいの大きさのエヴァ初号機が、彼と同じように仰向けに寝ていた。
思わずがばっと起きあがり、彼は絶叫していた。
「なんなんだよコレ〜〜!!」

19 :ひとりあそび・3:02/11/25 13:34 ID:???
彼は頭を抱えていた。
そろそろ夜が明けるが、初号機は死んだように横たわったままだ。
エヴァはどこでも生きていけるらしいから死んではいないのだろうけど、
さすがにぴくりとも動かずにのびているエヴァは不気味だった。
ましてや、彼はいつもコレに乗る側で、改めてコレを外側からじっくり見るのは
ほとんど初めてなのだ。なんだか変な感じだった。
…いや、違う。
そうじゃなくて、今問題なのは、どうしてエヴァがこんなところに、
こんな非常識な形で寝てるのかだ。なんでよりによってエヴァがいるんだ?
「僕にどうしろって言うんだよ」
声に出してみる。
静寂。
答えを期待していた訳ではなかったけど、なんだか虚しくなった。
彼はごろんと寝転がった。もしここにいるのがアスカだったら、それとも
綾波だったら。きっと最初はつらいし大変だろうけど、ここまで
馬鹿馬鹿しい事態にはならない筈だ。誰かがいるだけ、マシだと思う。
人の代わりにエヴァがいる。
…これって、ひとりぼっちっていうことなのだろうか?

20 :ひとりあそび・4:02/11/25 13:38 ID:???
彼は起き直って横たわる初号機を見た。
エヴァは寂しいとか、悲しいとか、感じるのだろうか? そもそも何か考えるの
だろうか? 話し相手をほしがったり、誰かに声をかけてもらいたがったり
するのだろうか?
彼はしばらく動かないエヴァを見ていたが、やがて諦めて、ちょっと笑った。
わかりっこないのだ。
わかるのは、エヴァではなく自分がそういう相手を求めていることだけだった。
話し相手がほしくて、声をかけてほしくて、寂しさを紛らわしてほしいのは、
彼自身の方なのだ。
それに気がつくと急におかしくなった。
「…ねぇ、何か言ってよ。起きて、動いてみてよ。僕は君のパイロットだったんだよ」
笑いながら話しかけてみた。ちょっと前まで、エヴァが動かないということは
死の危険を意味した。怖くて、めちゃくちゃ焦って、頭が真っ白になる事態だった。
それを今は平気で見ていられることがとても滑稽だった。
「今もシンクロってできるのかな。僕の命令に従うのかな」
ふふっと笑いがこぼれた。なんだか何もかも馬鹿馬鹿しくなってきた。もう何が
起きても驚く気がしない。ついでだ、という気持ちで、いつものように
やってみることにした。操縦桿もLCLもないけど。
身体をリラックスさせ、気持ちを落ち着け、頭を半分空っぽにして言う。
「エヴァ初号機、起動!」
何も起きなかった。
彼はちょっとだけ息をつめ、それから海の方を向いて、一人で大笑いした。
笑っていないと、あっという間におかしくなりそうだった。
沖合から朝日が昇る。その光が目を射て、一瞬目をつぶった。
そのときだった。

21 :ひとりあそび・5:02/11/25 13:49 ID:???
なんだか厭な気配がした。
動物が聞こえないくらい低い声で唸っているような、攻撃的な空気が
首筋を撫でた。それから今度は本当に勢いよく空気の流れが起こった。
彼は振り返り、目を瞠った。
目の前に初号機が立っていた。
まぶしい朝日を背に、エヴァは立っているというより、むしろ聳えていた。
ほぼ真下から見上げているのもあるのだろう、ものすごく大きく見えた。影になった
顔の中で目が光っている。
「あ…」
初めて使徒と戦わせられた時のように身体がすくんだ。
と、初号機は少し前屈みになって、彼の前に手を差し伸べた。
「え…? な、何…?」
彼は砂の上にへたりこんだまま訊いた。エヴァは答えず、促すように手を出してきた。
その顔は相変わらず凶悪で怖かったけど、なんだか自分でもそれに困っているようにも、
申し訳なさそうにも見えた。
彼はふっと笑った。
「わかったよ」
差し出された手を握る。途端に、ぐいっと身体が引き起こされた。ほとんど身体ごと
持ち上げられて、彼はよろけた。思わずエヴァの手にすがる。エヴァは支えてくれた。
「…ありがとう」
とっさに言葉が出た。なぜか不自然には聞こえなかった。
彼は手を離すと、服にくっついた砂を払いながらエヴァを見上げた。
初号機はかなり背が高かったが、少し背を丸めた姿勢のせいで、それほど
威圧感はなかった。長身の向こうから洩れてくる朝日がまぶしかった。

22 :ひとりあそび・6:02/11/25 13:50 ID:???
ふいに、初号機はいきなり彼に背を向け、足跡を残しながら砂浜を歩いていった。
波打ち際で立ち止まる。
次の瞬間、その背中からATフィールドに似た光の翼がばっと広がった。
「うわっ?!」
駆け寄ろうとして、彼は思わず立ち止まった。エヴァはそのままじっとしている。翼が
朝日を受けて強い光を放ち始める。
彼は少し下がったところから、茫然と初号機を見つめた。
一体何が起こってるんだ?
翼の光に目を細めながら、それでもしげしげと眺めていると、エヴァの上腕や
下膊部にある『EVA-01』のマーキングに一つずつ光がともり始めた。
彼はふと顔をしかめた。
あれは確か、エヴァの各パーツに動力が伝達された時のサインでもあったよな…?
ある予想が頭に浮かび、彼は脱力した。
でも、どう見ても、そうだ。
「…太陽光発電かよ…!」
力ない叫びが浜辺を渡り、初号機は素知らぬ顔で相変わらず”充電”を続けていた。

23 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/25 15:08 ID:???
たぶん続く。

…ありゃ、さっそく間違いハッケソ。
>>20の最後から4行目、「海の方を向いて〜」だと
それ以降の文の繋がりが全部おかしくなる。初号機が海側にいるから。
ということで、訂正
  >>20最後から4行目「海の方を向いて」→「そっぽを向いて」

24 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/26 01:29 ID:???
ラブラブ初号機シンジの予感

25 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/26 10:04 ID:???

もう見つかってるよ…
読んでくれてサンクス。
ageないでくださいね。できるだけ。

26 :ひとりあそび・7:02/11/26 15:04 ID:???
まるで光合成のような”充電”が終わるまで、しばらくかかった。
その間、彼は砂の上に座り込んでただ眺めていた。
エヴァを放ってどこかに立ち去ることもできるが、そうしなかったのは多分、
人恋しいからだ。
他人がいると不安になる。いなくなってしまえばいいとさえ思うこともある。
だけど誰もいないとなると、逆に他人の存在を求めたくなる。無性に誰かに
傍にいてほしくなるのだ。
ただ、その間に人が抱く他者の像は、膨れあがった期待が作る幻想、単なる
勝手な思いこみに過ぎない。実際に誰かと会えばそれはあっという間に崩れ去り、
失望をもたらすのは目に見えている。
彼は視線を落とし、片手で砂をいじりながら自分を分析する。
エヴァはヒトではないけど、ヒトの形をしている。
ヒトに見えるけど、決してヒトではない。
だから、安心して”優しい他人”の幻想を押しつけることができる。
いつその夢が裏切られても「これは本当はヒトではないから」と逃げることが
できる。今、エヴァの傍にいて、そこが居心地がいいと思うのはそのせいだ。
結局自分は卑怯で臆病なままなんだと、胸が痛んだ。
目の前の砂地に影が落ちた。
顔を上げると、初号機が光の翼を引っ込めて、また彼の前に立っていた。彼は
立ち上がって砂をはたいた。さらさらした、ほとんど抵抗もなく滑り落ちる
細かい砂だった。
よく見るとエヴァの背中から一枚だけ光の羽根が出ている。幅があまりなく、
長く空中に伸びているそれは、翼というより尻尾のようだった。日のある間は
これで直接動力を得るのだろうか?
エヴァは彼が何かするのを待っているかのように微動だにしない。
でも彼自身、何かするとか、どこに行くという当てもないのだ。頼られても困る。
それともこれは、お前が考えろ、ということなのだろうか。
「…これから、どうしようか」
独り言のように呟いてみた途端、派手な音をたてて腹の虫が鳴いた。
顔面がかあっと熱くなる。
エヴァはちょっとだけ首を傾けた。やれやれと笑っているように、見えた。

27 :ひとりあそび・8:02/11/26 15:06 ID:???
それからしばらく、初号機と一緒に食べられそうな物を捜すのに専念した。
砂浜には何も生えていないし、海には魚も貝もいない。いたとしても、
どうやって食べたらいいかわからなかっただろうけど。
とにかく、文字通りの死活問題だ。
砂浜を歩き回りながら、ふと必死になっている自分に気づいて、なんとなく
悲しくなった。いろいろ悩んでも、世界を壊すほどのとんでもないことを
やらかしても、やっぱりヒトだって生き物なのだ。権力でもなく、武器でもなく、
情報でもなく、最後の最後には食べ物と寝るところが欲しくなる。
だって生きているんだ、生きるのに必死になるのが悪いなんて誰にも言えない。
小難しい文句を並べるのは、お腹がいっぱいになって、その日寝るところを
確保できてから、初めてできることだ。
が、いくら捜しても、当面の空腹をしのげそうなものさえ見つからなかった。
赤い海は真っ青な空の下で不気味にのたうっている。
沖の方は高くなった太陽の光を受けてきらきら光っている。もしかしたらあれは
魚が跳ねているのかもしれない、と目を凝らしてみたが、やっぱりただの
波のようだった。
諦めて、今度は内陸の方へ進んでみることにした。海が駄目ならあとは
こっちしかない。道はないけど、砂浜のずっと向こうに、ビルらしき影が幾つか
ぼんやりと霞んでいる。かなり遠そうだけど、あそこまで行けば何か見つかるだろう。
彼は時々振り返り、エヴァがついてきているのを確認しながら、ぼやけた都市に
向かって歩き出した。

28 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/26 15:29 ID:???
たぶん、続く。

冗長だな。

29 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/28 22:25 ID:???
のんびり気長に続けてくれぃ

30 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/28 23:11 ID:???
>>29
ありがとう…
ちと某スレが忙しくて書けなかった。日刊のつもりだったのに…
明日は休みなので続きを書いてみます。

31 :ひとりあそび・9:02/11/30 01:21 ID:???
都市は遠かった。
海からもう大分離れたというのに、いっこうに近づいてこない。
太陽は真上からぎらぎらと照りつけてくる。日陰に入って休みたくても、
木も草も生えていないので、歩き続けるしかなかった。
見渡す限り白い砂と石ころばかりだ。同じ風景が延々と続いている。
だんだん、一箇所をぐるぐる回っているだけなんじゃないかと思い始めた。でも、
振り返ると足跡はちゃんと一列に残っている。
背中はすぐに汗だくになり、頭がもうろうとしてきた。
脚に力が入らないなと思った瞬間、目の前に地面があった。もろに顔からぶつかった。
起き上がる気がせず、しばらくそのまま砂に突っ伏していた。
初号機が助けてくれるのを期待していたというのも、少しはある。が、いつまで待っても
エヴァは手を貸してくれなかった。
虚しくなって、肘をついて顔を上げた。すると周りだけ影になっていた。
見上げると、エヴァが日よけ代わりに傍に立って、強い日差しを遮ってくれていた。でも
手を差し伸べようとはしない。
彼は力なく笑った。
「…こんなところで死ぬな、ってこと? わかってるよ」
砂を払い、足元を確かめながら立ち上がる。エヴァは彼がちゃんと歩けるようになるまで、
じっと”日よけ”状態のまま待っていた。
彼とエヴァは再び都市を目指して歩き始めた。

32 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/11/30 01:26 ID:???
たぶん、続く。

鬱駄死悩。

33 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/01 01:43 ID:???
失礼ながら他スレのレスを一時退避。
持ち込んじゃいけないんだろうけど、難しい時期なので。
すいません。

34 :関係ない話・1:02/12/01 01:45 ID:???
ついさっき、アフリカ組が無事帰還した。
シンジ君、レイ、惣流博士、同行していた兵士たちの話を総合すると、
トライラックスA級大使は無事に保護することができ、たまたま同じ場所にいた
便利屋スズキは復活したエヴァ・フェットによって倒されたという。「E」計画は
結局大使にはさしたる手出しをしていなかったようだ。しかし、その代わりとでも
言うように、A級大使救出部隊の前に綾波教の主席司教が出現、セカンドチルドレンの
クローンをパイロットとした量産機を見せつけていったという。彼らを目撃した
人々は、皆一様にショックを隠せないまま、その様子を語ってくれた。
「つくづく吐き気がする奴らね。旧東京で量産機に乗っていたのも、同じクローン
 だったって言うし・・・アスカを何だと思ってるのよ!」
葛城さんは不快感をあらわにして吐き捨てた。碇博士は青ざめた顔の惣流博士の傍について
何か言い聞かせている。司令代行、赤木博士もきつい表情になっている。
シンジ君は・・・彼には誰も声をかけられなかった。綾波レイ、渚カヲルでさえ、
黙って彼を見守るばかりだった。
ともかく、これで再びネルフおよびトライデントはほぼ全軍が集結し、京都戦に向けて
改めて準備を整えることになった。碇司令はメインスタッフに謎の言葉を残し、
司令なりの手筈をつけるためにまた姿を消した。
あとは関東方面に向かったランドマスター隊を待つばかり、の筈だった。
事件が起こったのはその直後だった。

35 :関係ない話・2:02/12/01 01:46 ID:???
『青葉です! イタリアの『L』から緊急連絡、そちらに回します!』
突然通信してきた青葉の顔はほとんどひきつっていた。画面が切り替わり、音声だけになる。
『こちら『L』だ。シチリアで大抗争が起こっている。マフィアの各家の衝突のようだが、
 こんなに急に抗争が起こる筈はないんだ。何が起きているのか、こちらでもまだ
 正確なところは掴めない。あ・・・ちょっと待ってくれ』
いったん「L」の声が途切れ、発令所は緊迫した沈黙に覆われた。
通信機から遠いところで騒ぎが起きているらしく、ノイズに混じって複数の人声が届く。
『何ということだ・・・』
戻ってきた「L」の声は驚愕にかすれていた。
『たった今、シチリア島を占領していたマフィアが軒並み沈黙したそうだ・・・』
「なんだと・・・各ファミリーが一個師団に匹敵する兵力を保持していた、その彼らがか?!」
司令代行は茫然と呟いたが、すぐにスタッフに指示を飛ばした。
「現存する欧州各地の協力者に繋げ。可能な限り情報を把握せねば」
「りょ、了解!」
葛城さんもすぐさま立ち直り、青葉に呼びかけた。
「マフィア全滅が事実なら、そちらにも既に何かの形で影響が出ている筈よ!
 奴らがイタリア綾波教と繋がっていたのなら、そちらの支部にも情報が行ってるわ。
 すぐに調べて!」
『了解、最近支部に到着した、全ての暗号通信を洗います』
そのときだった。ふいに全ての画面に同じ映像が映った。

36 :関係ない話・3:02/12/01 01:48 ID:???
『や、ご無沙汰』
ネルフ、トライデントに属する者全員が聞き慣れた声。発令所は一瞬痛いほどの沈黙に
包まれ、ついで全員が同じ名前を呼んでいた。
「加持さん!」
途端に葛城さんが通信機を奪い取った。
「ちょっと、あんたこれどういうことよ?! まさか全部あんたの仕業とか言わないでしょうね?!」
画面内の加持さんは葛城さんの激昂を軽く受け流し、頭を掻いた。
『残念ながらその通りなんだな、これが。・・・詳しく説明すると長くなるが、MIBの奴らが
 ヒカリちゃんとEVA4号機改を接触させちまったんだ。まあ、奴らの目的を考えると、いずれ
 そうするしかなかったようだけどな。利用する筈だったマフィアと揉めて、充分な準備期間を
 置かずに再起動を急いだ彼らの結末が、これ』
加持さんは画面からちょっとずれて、背後を指さした。暗くてよく見えなかったが、床にいくつか
水たまりのようなものが広がっているのがわかった。そのうち一つには人型の機械の残骸が浸っている。
「それって、まさか・・・・」
『そ、4号機改の力を見誤ったってとこかな。大事をとってヒカリちゃんに催眠なり何なり安全策を
 講じていなかったのが、奴らの敗因だ。催眠によるシンクロ率の変化を恐れたんだろう』
「ってことはそれ・・・ヒカリちゃんがやったの?!」
『ああ。・・・そっちに鈴原君はいるか? 彼女が話したいそうだ』

37 :関係ない話・4:02/12/01 01:49 ID:???
赤木博士が俺の肩を叩いた。
「今なら彼はケイジよ、至急そっちに繋げて」
「は、はい!」
画面が二つに分割され、あっけにとられているプラグ内の鈴原君の顔が映った。
もう一つの画面に4号機の中にいる洞木さんの映像が映ると、その目がみるみる大きくなった。
『委員長・・・無事やったんか・・・ん?! なんで委員長がEVAに乗っとるんや?!』
洞木さんは恥ずかしそうな、困ったような顔で、しかし口調はしっかりと言った。
『鈴原・・・あのね、私も鈴原や碇君と同じだったんだって・・・鈴原にはショックだろうから
 皆黙ってたんだろうけど・・・』
鈴原君は混乱した顔で画面を凝視している。無理もない。
『それでね、鈴原・・・私は、大丈夫だから。これ、お母さんなの。鈴原は、妹さんだったんでしょ?』
 これに乗って、私にもできることがあるって、わかったの。いつまでも皆の後ろにいるだけの私じゃ
 いられないから。・・・それで、その』
『なんや、委員長?』
洞木さんは突然顔を染めた。
『あの、これから、そっちに帰るから。帰ったら、あの・・・』

38 :関係ない話・5:02/12/01 01:50 ID:???
鈴原君はきょとんとしていたが、やがて優しい顔になって笑った。
『ああ、早よ帰ってきぃや。待っとるさかい』
洞木さんは赤い顔のまま、うん、と頷いた。画面が加持さんに戻る。
『そういう訳だから。これから、司令にちょっとご支援頂いて、4号機ごとそっちに戻るよ。
 ケイジに空き、用意しといてくれよ。ああ、青葉君も回収してくから』
絶句していた葛城さんが、ようやく言葉を取り戻した。
「ったく、あんたはいっつもそうやって勝手ばっか・・・たまには、」
葛城さんはふいに、言いかけた台詞を呑み込んだ。加持さんはひどく真面目な表情で葛城さんを
見つめ、言った。
『いつも迷惑かけてすまないな、葛城。今度は遅れないよ。・・・じゃ、な』
回線が切れた。
葛城さんはびっくりしたような顔で黙っていた。赤木博士がその背中をつついた。
「全く、加持君も変わってないわね。・・・デートで遅れた時、いつもああして
 誤魔化されてたんでしょ」
「う、うっさいわね〜」
葛城さんは怒っているようだが、俺は見てしまった。彼女が一瞬懐かしげに微笑むのを。
『じゃ、俺も撤収するか。・・・お〜い、日向、何落ち込んでるんだ?』
画面内の青葉が脳天気な声をかけてきた。俺はこちらから回線を切ってやった。
・・・わかってて聞くな、畜生!! うう・・・

39 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/01 01:52 ID:???
以上、関係ないスレの話でした。
ここを読んでくださっていた方、すみません。
今後はこういうことはしません。
ごめんなさい。

40 :ひとりあそび・10:02/12/03 15:04 ID:???
海は完全に見えなくなった。
砂浜と同じ白いさらさらした砂と、それが固まったもろい岩でできた低い丘が
この世界の全てのようだった。
…忘れてはいけない、海とならんでもう一つ重要なモノがあった。
バラバラになって世界中に散らばっている、綾波の身体だ。
例えば今朝までいた海辺からは、真っ二つになって少しずれている、
綾波の頭が見えていた。同じ浜辺に立ってちょっと見る方向を変えると、
手首のところからちぎれた片手が視界に入ってくる。他の部分に関してはまだ知らない。
想像もつかないところから来て、想像もつかない役目を終えた、その真っ白い抜け殻は、
どんな説明も一見のもとに拒んでしまうすさまじい説得力とともに、ただ転がっていた。
転がっていた、というにはあまりにスケールが大きすぎたけど。
「…何も感じないんだ」
彼はよろよろと歩きながら呟いた。
「綾波も、母さんも、もうここにはいないんだ。アスカも戻ってこなかった。
 ここにはもう僕しか残ってないんだ」
ふと傍らを歩む初号機を見上げて、慌てて付け足す。
「…ごめん、君もいたね」
エヴァは答えない。
「けど、君を見た時に、何か吹っ切れたんだ。ここは僕の世界だって。
 あの赤い海の中とまるで変わらないんだよ。僕がいる、っていうのが
 はっきりわかるかわからないか、それだけの違いなんだ。
 どうして他人がいないのに自分の存在を実感できるのか、よくわからないけど」
と、エヴァが立ち止まった。彼は不審に思ったものの、暑さでぼんやりした頭では
何やってるんだろうくらいのことしか浮かばなかった。それで、構わず続けた。
「…虚構の始まり、現実の続き、夢の終わり。そういうことなんだと思う。
 父さんや母さん、綾波にカヲル君がせっかく夢から覚ましてくれたのに、 
 結局、僕にはまだ現実がよくわからなかった。そんなどうしようもないヤツには
 こんな虚構みたいな世界がお似合い…って…」
言いかけて彼は口をつぐんだ。
遙か向こうから、砂煙をあげてこっちに突進してくる使徒が見えた。
彼は卒然と悟った。この世界にも、”他人”は確かに存在しているらしい、のである。

41 :ひとりあそび・11:02/12/03 15:39 ID:???
「ううわあああああっ?!」
彼は恥も外聞もなく絶叫して、初号機の背後に回り、それから考え直して
初号機の腕を引っ張って走り始めた。冗談じゃない。
使徒、彼が始めてエヴァに乗って戦ったその使徒は、当時と同じサイズだったのだ。
どう考えても彼やこの大きさの初号機に太刀打ちできる相手だとは思えない。
エヴァは彼に引っ張られるまま従順についてくる。
「…っく、どうなってるんだよ!」
彼は息を切らしつつ全力で走った。
暑い、空腹で力が入らない、喉乾いた、汗で服が張り付いて気持ち悪い、そんな
くだらないことばかり頭の中に充満して、判断力を鈍らせる。こんな時なのに。
こんな時だからだよ、と言って、畑に水を撒いていた加持さんの姿が一瞬浮かんだ。
嘘だ。本当に洒落にならない事態に、あんな余裕のあることなんてできる訳はない。
少なくとも彼にはできそうになかった。必死で逃げるだけだ。
ふと、もしかしたら使徒はこっちを狙っているのではないかもしれない、という
考えが浮かんだ。思いつくのが遅すぎたかもしれないけど。が、確かめてみる価値はある。
彼はしばらく走り続けた後、腹を決めて背後を振り返った。
途端に足元の地面が吹っ飛んだ。砂が噴き上がる。彼はとっさに目を庇った。
使徒が光線を放ったらしい。
失敗。
「…殺される」
茫然と呟き、彼は再び走り出した。空腹も疲労も一緒に吹っ飛んでいた。
とにかく、逃げなければ死ぬ。
なんだか無性に腹が立っていた。静かに世界の終わりなり何なり迎えてやろうと、
人が覚悟した直後にこれだ。ゲームのバッドエンドみたいな世界で、訳のわからない
敵に殺される。しかもそれは彼が一度殺した敵なのだ。
不条理すぎる。
「…こんなエンディングがあってたまるかっ!」
やけになって叫んだ。
その瞬間、すぐ前に使徒の光の槍が命中し、目の前が真っ暗になった。

42 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/03 15:56 ID:???
なんとなくピンチで、たぶん続く。

43 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/03 20:13 ID:???
初号機に期待sage

44 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/05 00:01 ID:???
此処みたいに放置スレをコソーリ有効活用しているスレッドって他にもあるのかいな?

45 :ひとりあそび中の人:02/12/05 00:27 ID:???
…ヒトがいる。

>>43
来てくれてありがとうございます。
sageもありがとうです。
初号機期待ですか…今から少し書いてみますが…どうなのか。

>>44
こちら様も来てくれてありがとうございます。
地下スレを捜してみれば、結構あるようですよ。
キャラハンさんがいるスレもありますし(現在は稼働してないところもありますが)
ここのように話が進んでいるスレもあります。
一つ、このスレの近くに、質が高くて堅実なお話スレがありますよ。

46 :ひとりあそび・12:02/12/05 01:11 ID:???
誰かが身体をガクガク揺さぶっている。
縦、横、斜め、一秒ごとに方向もぶれの強さも変わる。何かに運ばれている
途中らしいが乱暴すぎる。まるで配達アルバイトの自転車に積まれた朝刊の気分だ。
おまけに腹が何かに固く押しつけられて、ろくに息もできなかった。
彼はとにかくまず呼吸しようと口を開きかけ、思いっきり舌を噛んだ。
「いっ…てぇ!」
思わず叫び、でもそれで、却って意識がはっきりした。さっきまでの状況が
フラッシュのように閃いて消える。
追われていたのだ。
とりあえず生きてはいる。一体どうなったのだろう。
彼は苦労して揺れる頭を上げ、そして後悔した。
状況はまるで改善されていなかった。いや、悪くなっていた。
初号機が彼を荷物のように肩の上に担いで走っている。頭が背中側に来ていたので、
後ろの様子がよく見えた。見えなければ良かったと、心底思った。
使徒が増えていた。
顔のすぐ傍から、エヴァの動力源らしい光の羽根が一本後方に伸びて揺れている。
その向こう、さっきの使徒が相変わらずものすごい砂煙を上げて突進してくる。
そして、更にその後ろから、彼が二番目に戦った、あのイカみたいな使徒が
猛烈な速度で飛んでくるところだった。既に戦闘態勢、赤っぽい身体の両脇には
あの光るムチがヒュルヒュルとなびいている。
「…絶望的じゃないか」
彼はエヴァの肩に掴まって上体を起こし、呟いた。
無理だ。
使徒一体でもあんなに手こずったのに。
今まで生きていたことが奇跡に思える。いや、まさに奇跡だ。
「ねぇ、どうするんだよ! ただ逃げたって意味がないよ、何か考えなきゃ!」
彼はパニックになりそうなのを何とかこらえながら、エヴァの肩を叩いた。
真っ白い地面がぐるぐる回る。砂地から飛んだ小石がぴしりと顔を打つ。
今度こそ死ぬのだ。このイカレた世界で。
彼は覚悟した。
しかし、エヴァは足を止めようとはしなかった。
まるで何か手があるとでも言いたいかのように。

47 :ひとりあそび・13:02/12/05 01:28 ID:???
初号機は彼を抱えたまま、巧みに丘の間を抜け、左右に進路を変え、
しかし明らかに特定の方向に向かっていた。
何かあるのだ。
彼は喚くのをやめて、苦労して姿勢を変えると、前方にじっと目を凝らした。
初めは相変わらず白い砂と石ころばかりだった。
そのうち、白い平原の彼方に一本、線が横切っているのが見えてきた。
妙にくっきりとしたその線はぐんぐん近づいてくる。
「なんだ?!」
彼は落っこちそうになりつつ身を乗り出し、そしてまた後悔した。
崖だ。
横線に見えたのは断崖の端っこのラインだった。崖の向こうもこっちも
真っ白なので、ぱっと見にはわからなかったのだ。
初号機は何の躊躇もなく崖っぷちに向かって突っ込んでいく。止めようにももう遅い。
「…うわあああああっ!」
彼は絶叫し、固く目をつぶった。
ふわりと重力の感覚が無くなった。

48 :ひとりあそび・14:02/12/05 01:56 ID:???
いつまで経っても、身体が地面に叩きつけられる衝撃は襲ってこなかった。
「…あれ?」
彼は恐る恐る瞼を開いて、そして目を見張った。
眼下一面に真っ白い峡谷が広がっていた。塔のような岩頭が幾つもそそり立ち、
ごく薄いグレーから、吸い込まれそうな黒までのあらゆるバリエーションを
持った影がそれらをいろどっている。
さっきと同じ白い砂でできている筈なのに、雪の彫刻のようにきれいだった。
「すごい…」
彼は息を呑み、ふと自分がどういう状況にいるのかに気がついて、再び身を乗り出した。
空にいた。
初号機は光の翼を広げ、彼を抱えてゆっくりと滑空していた。
「飛んでる…のか…」
ばたばたと服の端がなびいた。ふいに風が吹きつけ、髪が額に貼りつく。
白い岩群の上をエヴァの影が静かに滑ってゆく。光の翼を背にしているせいで、
それは光輪を背負っているように見えた。
が、のんびりフライトを楽しんでいる暇はなさそうだった。
いきなり後ろの崖が爆発した。粉々になった岩がなだれをうって崩れ落ちる。
その煙の中から使徒が飛び出す。人型の方は谷間に地響きとともに着地し、
イカはそのまま飛んで襲ってくる。
「やばいよ?!」
彼が叫ぶと、初号機は応えて光の羽根をまっすぐ真上に揃えた。浮力を失った身体が
急降下していく、いや、真っ逆さまに落ちていく。思わずエヴァの首に抱きついた。
地面に激突する寸前、ばっと翼が開いた。一瞬だけ浮く。
エヴァは慣れた動作で翼を数回動かし、無事に着地した。彼を降ろし、すぐに上方を窺う。
彼も慌てて上を振り仰いだ。
使徒二体は、急激な降下で彼とエヴァを見失ったらしく、その辺の岩をめちゃくちゃに
壊しまくっていた。でもあの大きさだ。見つからなくても巻き添えだけで充分マズい。
今のうちに何とかしないと、死ぬ。
焦って周りを見回した時、妙なものが目についた。

49 :ひとりあそび・15:02/12/05 02:22 ID:???
谷底は平原と同じく粗い砂地になっている。
その上を、きらきら光る青いものが一列になって移動していた。
しゃがみこんで目を凝らす。次の瞬間、彼は後ろに飛びすさった。
「…っ、また使徒か!」
手のひらに乗るくらいの青い正八面体。綾波と一緒に倒した、あの使徒だ。
それがいくつもいくつも、蟻の列のように並んで動いている。
いきなり撃たれた時の激痛とショックが胸に押し寄せた。その後綾波に駄々をこねた時の
後味の悪さも。そして、初めて作戦が成功して嬉しいと思った、その時の気持ちも。
彼はそろそろと戻って、手を近づけてみた。
手が青い使徒に触れるか触れないかの瞬間、バチッと静電気に似た衝撃が走った。
一瞬だったが、彼の目には見慣れた赤い光が見えていた。
「ATフィールド?! …こんなに小さいのに」
初号機はまだ気づいていないようだ。彼は腕を叩いてエヴァの注意を引いた。
途端にエヴァの目が光ったような気がした。
突然、エヴァは彼の手を掴んで走り出した。今度はやみくもに逃げるのではなく、
青い使徒の列に沿って、濃い影の落ちる谷間を抜けていく。
いい加減脚がだるくなって来た頃、ふいに視界が開けた。
湖だ。
赤くない、きれいな水が一面に広がっている。使徒の列はそこに続いていた。
忘れていた喉の渇きが一気に甦った。
「…水…やった、水だ!」
水辺に駆け寄ろうとした時、真後ろの岩が派手な音をたてて崩れた。
使徒に追いつかれたのだ。
とっさに振り向いたその瞬間、逆に前方の空気がふっと異様なくらいに静まった。
目をやる前に、ものすごい水しぶきが彼を襲った。
「うわっ?!」
エヴァが駆け寄って彼を庇う。その向こうで水柱とともに湖面が割れ、巨大な青い物体が
姿を見せ始めていた。

50 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/05 02:29 ID:???
限界。書きすぎました。
スカスカ。

それでも、たぶん、続く。

51 :ひとりあそび・16:02/12/05 14:46 ID:???
それは間違いなく、あの夜戦った使徒だった。
巨大な宝石のようなそれがゆっくりと波を分けて浮かび上がってくる。威容、と言ってよかった。
全身がすくむのを感じた。
一度は勝てたことが信じられない。間近で見る使徒は圧倒的だった。
と、彼は目を見開いた。
さっき彼とエヴァが道案内がわりにしてきたあの小さい使徒たちが、黒い人型使徒の
巨大な足から逃げまどっていた。しかし、大きさも移動速度も違い過ぎる。人型使徒が
一歩動くと、その足跡の中に踏みつぶされた青いかけらがいくつも見えた。イカ使徒の
振り回す光るムチに引っ掛かって投げ飛ばされ、岩に当たって砕けるものもいた。
身体の熱がすうっと引いた。
使徒に襲われて死んでいく人間に、見えた。
頭の中が真っ白になった。逃げろと本能が警告しているのに、動けなかった。
次の瞬間、エヴァが彼の身体をひっ抱え、一緒に湖に飛び込んだ。
水音。他人事のような。
湖は深かった。立ち昇る泡とともに、あっという間に水面が遠くなった。エヴァに抱えられたまま、
彼は銀箔を張りつめたような水面と、青い使徒の巨大な底部を見ていた。
突然水面が白熱した。それからもう一度。続いて、水の中にまで衝撃が伝わってきた。
でも嘘のように静かだった。
揺れる水面の向こう側でイカ使徒のムチが青い使徒に飛び、巨大なATフィールドに
弾かれるのが見えた。人型使徒の光の槍も同様に防がれた。続いてまた水の上は
光に包まれた。
ふいに水面が割れて、黒いものが水の中に突っ込んできた。人型使徒の腕だ。途中からちぎれている。
それを最後に、攻防は止まった。

52 :ひとりあそび・17:02/12/05 16:07 ID:???
水から上がると、人型とイカはどこかに消えていた。
水際に吹っ飛んだ腕だけが転がっている。
彼は飲んでしまった水に何度もむせながら、踏み荒らされた砂浜を踏んで歩いていった。
小さい青い使徒はかなりの数が死んでいた。白い砂の上はきらきら光る破片が
いくつもいくつも散らばっていた。
殺したのも殺されたのも使徒なのに、なぜか悔しくてたまらなかった。
振り返ると、エヴァは全身から水を滴らせながら、波打ち際でじっと待っている。
ひどく、安心した。
逃げて良かった。もしエヴァに命令できて、戦わせていたら、ここに転がっていたのは
使徒ではなくエヴァの死体だっただろう。そんなのはもう耐えられそうになかった。
「…相手は人間じゃないのに」
彼は呟いて笑った。人は拒絶しておいて、エヴァには依存する。
でも、全ては自分の心次第だと思った。相手が人だろうと、兵器だろうと、
死者だろうと、それは変わらない。自分の気持ちひとつで、
相手の価値も存在もいくらでも変化する。
他者との関わりは、結局自分勝手な思いこみ、
所詮、ATフィールドの内側で見る幻想でしかないのだから。
それなら自分の心が感じることを信じた方がいいのかもしれない。
少なくとも、今は。
立ち止まっていると、エヴァはゆっくりと歩み寄ってきた。
彼はエヴァが追いつくのを待って再び歩き出した。

53 :ひとりあそび・18:02/12/05 16:51 ID:???
使徒の腕からはどす黒い血が流れ出して、湖を濁らせていた。
その周りに生き残った小さい使徒たちが集まっている。
彼は興味をひかれるまま近づいて、腕の下を覗き込み、はっとした。
小さい青いものがいくつか腕の下でもがいている。
挟まれて出られないのだ。
他の使徒たちはその周りをうろうろしているが、どうしようもないようだった。
ふと気づくと、エヴァがこちらを見ていた。
彼はエヴァを見上げ、ぐっとうなずいた。
「…やろう」
光の加減で、一瞬エヴァの顔に何か表情が浮かんだ気がしたが、エヴァが彼の傍に
かがみこんだのでわからなくなった。
彼とエヴァは使徒の腕に両腕を当て、同時に思いっきり押した。
使徒の腕はやたら重たい上にじとっと湿っていて気持ち悪かったが、そんなことを
気にしている余裕はなかった。しばらく彼の荒い息づかいが谷間に響いた。
何度目かにやっと腕がぐらついた。すかさずエヴァが強烈な蹴りを見舞う。腕は
ごろりと転がって、その下から青い使徒たちが飛び出した。
集まっていた他の生き残りたちも合流してくるくる周りを飛び回っている。
彼は息を整えながら笑った。
小さい使徒の群れはひとしきりその辺を飛び回った後、一列になって
巨大な青い正八面体の方へ飛んでいった。いったん反射で見えなくなったかと思うと、
使徒の頂上辺りにまた現れた。輪になってゆっくり頂上を回っている。
溜息が出るくらいきれいな光景だった。
巨大な使徒はそのまま、湖の奥の方へ向かってゆっくりと移動を始めた。
彼とエヴァは長い間それを眺めていた。
「あれって、…親、だったのかな。小さいのの」
しばらくして彼はぽつりと言った。エヴァは指でつまめるくらいの大きさになった
使徒を見つめている。当然返事が返ってくる訳はなかったけど、気にならなかった。
この妙な世界を、見られるだけ見てやろうという気が、し始めていた。

54 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/05 16:56 ID:???
心底つまんね。

鬱駄死悩。

でも、続く、かもしれない。

55 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/10 23:05 ID:???
いつまでも期待sage

56 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/11 15:17 ID:???
風邪引いて一日ベッドでのたうってさんざん嘔吐して来てみたら、
sageておいてくれた方がいました。ありがたや〜。

>>55
来てくれてありがとうございます。
誰かが見てくれたと思うと涙が出てきます(危
本当に感謝です。

57 :ひとりあそび・19:02/12/11 16:06 ID:???
この世界での二度目の夜は、湖の傍で過ごした。
波打ち際を歩いて、どこからか打ち上げられた流木を集めて火を熾し、
初号機が獲ってきた魚を焼いて食べた。魚は白くて変な形をしていたけど、
そんなこと気にするには、あまりにも腹が減っていた。
エヴァはものすごく力があって、木をすり合わせて火をつけるのもあっという間に
こなしてしまった。だけどそれも日が沈むまでで、白い峡谷が影に覆われると、
エヴァはさっさと光の羽根を引っ込め、ごろんと横になってしまった。
本当に太陽光で動いているようだ。
彼は食べ終わった魚の骨を焚火に放り込み、エヴァの傍に寄った。
静かだった。
とりあえず空腹が満たされ、身体も暖まると、一度は忘れていたことが次々に
頭に浮かんでくる。考えないようにしていたことも。
ここは、一体どういう世界なんだろう。

58 :ひとりあそび・20:02/12/11 16:08 ID:???
昼間エヴァと歩いていた時に言った”虚構みたいな世界”というのは、
間違っていないと思う。
問題は、この馬鹿でかいセットを造ったのが誰かということだ。
赤い海に無人の風景。ひどくわかりやすい舞台設定。ご丁寧にエヴァと使徒までついている。
海の中で気がつくまでのことを考えると、意識してにしろ無意識にしろ、彼自身が
望んで造ったというのが、一番ありそうな答えだ。でも、それだけではない気がする。
彼を助けるエヴァがいて(本当は助けている訳じゃなくて、別の行動理念があるのかも
しれないけど)、敵がいて、中立のものもいて、危険はあるけど本当に危なくなると
ちゃんと彼は助かるようになっている。
都合が良すぎる。まるでゲームだ。
じゃあ、もしここで死んだらどうなるんだろう。あの青い小さい使徒は
間違いなく死んでいたから、この世界にも死はあるらしい。でも、
彼にとってはどうなんだろう。
まともに死ねるんだろうか。
それとも、またあの赤い海辺から”やり直す”んだろうか? ひょっとすると、永遠に。
彼はきつく膝を抱えた。
死ぬよりそっちの方がよっぽど怖かった。
母さんは永遠を選んだ。無限にある時間に押しつぶされそうになりながら
生き続けるなんて、でも彼にはできそうになかった。
弱まった焚火の光の届かない先、海のよりいくぶん穏やかな波が、
真っ暗な砂浜に打ち寄せている。
彼は顔を上げた。
暗闇の中から足音が聞こえる。
突然、くすぶっていた火が、ふっと消えた。

59 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/11 16:12 ID:???
たぶん、続く。

次回、死者登場その1となります。
誰かリクエスト出してくれたらそのキャラになるかも。
…ただしユイさんは、特殊なので無しで。

60 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/12 06:37 ID:???
本編で一度も名前を呼ばれなかった名無しのロンゲなんてどうよ?

61 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/12 15:35 ID:???
! 本当に来た…
ありがとうございます。
青葉さんのこと…っすよね? 念のため。

それにしても>59は調子乗りすぎでした。すみません。

申し訳ないですが、今日は時間がないので、続きは明日の今頃に。

62 :60:02/12/12 21:24 ID:???
左様、青葉シゲル氏であります
せめてFFで出番を作ってあげれば彼も成仏できるかと(w


63 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/12 22:14 ID:???
お魚は小ガギエルでしょうか?

青葉氏はEOEでも一人だけ補完描写が違ったからここで出てきても説得力がありそう

64 :ひとりあそび・21:02/12/13 15:56 ID:???
すとんと幕を落としたように、辺りは真っ暗になった。
彼は腰を浮かせ、横たわる初号機ににじり寄ってその腕を掴んだ。
足音はまだ聞こえている。
濡れた砂を踏む湿った音は少し遠くなり、安心しかけた瞬間、いきなりすぐ傍に現れた。
彼は身震いし、思わずきつく初号機の腕を握り締めた。
また使徒だったら、今度はもう逃げ切れない。相手にはこちらが見えているようだが、
こっちはさっきまで明るい火を見つめていたからまだ目が慣れない。おまけに頼みの
エヴァは動かないのだ。覚悟を決めるしかなさそうだった。
彼は黙って暗闇の向こうに目を凝らした。
消えた焚火からはかすかに白い煙が立ち昇り、その向こう側はよく見えない。
それでも、足音の主がそこで止まり、次いで腰を下ろす気配は伝わってきた。
ふう、と溜息が聞こえた。
彼は身を乗り出した。ヒトだ。声をかけようとした時、先に真っ黒い影が動いて、
聞き覚えのある声を発した。
「初号機の調子はどうだい」

65 :ひとりあそび・22:02/12/13 16:02 ID:???
彼は軽く息を吸い込んだ。
「青葉さん!」
一気に緊張が解けた。彼は立ち上がったが、相変わらず薄い煙の向こう側は見えなかった。
「青葉さん、青葉さんですよね?! 良かった、僕以外に生きてる人がいたんですね!
 ホントに良かった…あ、あの、何か明かり持ってませんか? 火が消えちゃって」
声は谷間の岩壁に反響して膨らみ、闇に吸い込まれた。
「ああ…悪いけど、俺も何も持ってないんだ。ライターくらいあれば良かったけど、どっかで
 落としちまったらしい」
戦闘の時にいつも後方からサポートしてくれていた声が言った。
胸がいっぱいになった。一人じゃなかった。他にもいたのだ。それも知っている人が。
「いいですよ、僕だって何もないし…ホント、エヴァがいたからいいけど、
 今まで生きてこられたのが自分でも不思議なくらいですよ」
あとからあとから言葉が溢れてくる。自分でもおかしいくらい、はしゃいでいるのがわかる。
でも、嬉しかった。
「はは、パイロットで良かったのかもな。使徒もいるようだし、大変だったろ」
「はい、でも何とか生きてます。…青葉さんも、よく無事で」
彼は砂地に座り直して、相手がいるとおぼしき方向を見つめた。まだ目が闇に慣れず、
いくら目をこすっても人の姿は見えてこない。もどかしかった。
「俺はいい位置にいたし、直接だったからな。ここに来るのもすぐだったのさ」
声だけが聞こえる。
彼は少し眉をひそめた。よくわからない。けれど問い直す前に、相手は続けた。

66 :ひとりあそび・23:02/12/13 16:04 ID:???
「まあ、それはまだいいか。…君とちゃんと話すのは、確かこれが初めてだったっけ?」
「え…あ、そういえばそうですね」
彼は慌てて返事をした。
確かにそうだ。日向さんや伊吹さんとは話をした覚えがあるのに、この人とは
まともに喋った記憶がない。なんでだろう。
彼は少し考えてから、ふと思い当たった。
「あの、ちょっと訊いていいですか」
「なんだい?」
「…前、のことなんですけど」
いったん口ごもり、彼は思い出そうとした。エヴァの中で初めて本気で反抗した時のことだ。
あの時は身体が熱くて、LCLの中なのに息苦しかった。頭の中は逆に耳鳴りがするくらい冷えていた。
その混乱した感覚の中で、彼は発令所を睨みつけていた。
「トウ…参号機の事件のあと、僕がエヴァから降りようとしなくて、騒ぎになった時のことです」
湖の方で水音がした。
魚が跳ねているのだろうか。それとも、さっきの青い使徒たちが戻ってきたのだろうか。
「その時、日向さんも伊吹さんも、怒った僕を説得しようとして呼びかけてくれた。でも、
 青葉さんは何も言わなかったですよね?」
続けながら、彼は納得していた。そうだ。思い返してみれば日向さんや伊吹さんとも大した話を
したことはない。ただ、あの時に強く呼びかけられたから、何となく距離が縮まったような
気がしていただけだ。
でもこの人にはそれがなかった。
「…どうしてですか?」
わずかに躊躇する気配がした。いや、考えているのか。沈黙が落ちる。
少しして、答えが返ってきた。
「どうしてかな…多分、意味がないと思ったからだろうな」

67 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/13 16:12 ID:???
すみません、半端ですが、今回はここまで…

青葉氏、難しい。
>>62さん、また来てくれてありがとうございます。
成仏、するでしょうか。青葉氏。
>>63さん、鋭いご指摘。そこまで考えていませんでした…何とかせねば、と、
言うはやすし、行うは…略。
魚は多分ガギエルです。気づかずに全部食べたシンジ君の運命やいかに。

難しい。なんでこんな展開になったのやら。
でも、たぶん、続きます。

68 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/16 00:40 ID:???
青葉氏が良い感じですなsage

69 :ひとりあそび中の人:02/12/16 21:00 ID:???
また随分と間が空いてしまった。
>>68さん、また来てくれて本当にありがとうございます。

が…
申し訳ないですが、今日も無理です…
でも明日は暇なので、続きが書けるかも、というか、書かないと
話が頭の中から逃げてしまう。

某スレの担当が現在重度のスランプ(おおげさ)中。
ということは、またこっちが進むかもしれない、と自分でプレッシャーをかけてみる。

70 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/17 18:54 ID:???
…すみません嘘つきました…
今日も何も書けそうにないです。

何とかしないと。

71 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/18 10:36 ID:???
まあ、そんなに自分を責めずにのんびりと書いておくれ

72 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/18 15:38 ID:???
>>71
ありがとうございます…すごく、嬉しいです。
頑張らないと。

また今日も無理そうです。少なくとも今は。夜に来られれば、とも思いますが、
…うう。
ごめんなさい。
平日の方が時間が取れるので、この週末までには、必ず。
…と言って守れるかどうか自分でも確証がおけないのが悲しい。

73 :ひとりあそび・24:02/12/24 16:19 ID:???
「…うん。意味がないと思ったから、何も言わなかったんだ。実際、なかったろ」
声は考えながら繰り返した。
なぜか、周りの空気がふっと温度を下げたような気がした。彼は両腕を抱え、膝を引き寄せた。
「…どういうことですか」
「だから、あの時の君に何を言っても何の意味もなかっただろうってことさ。
 君は完全に頭に血が昇っていた。碇司令以外の誰が何を言っても、聞こうと思ってなかっただろ。
 当時君の置かれていた状況を考えればそれも当然だ。だから無駄な呼びかけはせずに、
 俺は俺の仕事をした方が、あの場合より効率的に事態に対処できると思ったのさ。
 それだけのことだよ」
彼は絶句した。
「効率的に…って、そんな」
暗闇の中の声は穏やかで気負いがなくて、何でもない世間話でもしているような調子だった。
わざと無機的な言葉を選んでいる訳でもなく、偽悪的になっている訳でもなく、
本当に自然に出てきた言葉を喋っている感じだった。
この人は本気でそう思っている。
ミサトさんは、自分も泣きそうな声でトウジのことを教えてくれた。日向さんも伊吹さんも、
初号機を乗っ取った彼を怒らせて自分たちにも危険が及ぶのを覚悟で説得してくれた。
その同じ時に、この人はただ厄介な事態を解決しようとしか考えていなかったのか?
「そう、少しでも皆が助かる可能性があるうちに。
 もし君が初号機で本気で暴れていたら、本当に本部は壊滅していただろう。
 そうなったら大勢の人が死んでいた。それに本部施設がなくなったらエヴァの運用、
 ひいては以後の作戦内容にだって支障が出る」

74 :ひとりあそび・25:02/12/24 16:20 ID:???
かっとした。
彼は砂を蹴って立ち上がっていた。
「…そういうことを言ってるんじゃないでしょう!」
抑えても声が震えた。この人は一体何の話をしているんだ?
闇の中の人影は全く動じなかった。
「俺も感情論の話なんかしたくない。エヴァは対使徒用の兵器なんだ。一個人の専有物じゃない。
 君らパイロットが毎回あんな風に年齢相応の反抗をしていたらどうなる?
 そこに使徒が襲来したら全部終わりだ。
 あの頃、俺たちネルフには全人類の生死がかかってた。誇張じゃなく本当のことだ。
 君らはどうか知らないが、ネルフのスタッフは多かれ少なかれ、常にそのことを念頭においてた。
 だから俺は、あの時俺がなすべきだと思った行動をとった、或いは不要な行動をとらなかった、
 そういうことだよ。君に悪意があった訳じゃない。必要だと思えなかっただけさ」
声はただ淡々とそう言って、黙った。
握り締めた拳が震えた。
必要なことだからやった? 必要じゃないからやらなかった?
…それじゃまるで父さんじゃないか。
怒鳴りたい衝動を必死で抑えた。この人の言っていることは何も間違ってない。
間違ってないんだ。あの頃の自分は、何も本当にはわかってない子供だった。今はそれくらいわかる。
でも、違う。
そんな大人の都合のような言葉を聞きたかったんじゃないのに。
そんな、どんな気持ちからも遠い言葉を聞きたかったんじゃ、ないのに。
けれど何を言ってもすれ違いになるだけだろう。
通じない。
「…青葉さんて、冷たい人ですね」
彼は呟いた。

75 :ひとりあそび・26:02/12/24 16:21 ID:???
「そうだよ」
少しだけ沈んだ声が答えた。
「俺は人に優しくできなかった。表層的な感情は動いても、本当は誰が傷つこうが、結局は
 どうでも良かったんだと思う。…気分のいいことじゃないが、そういう人間だっている。
 俺はそれがわかっていて何もやろうとしなかった。その報いがあの結果さ」
途切れ途切れにたなびいていた煙が最後に揺らいで消え、その向こうの闇で立ち上がる気配がした。
ふいに圧倒的な不安が押し寄せた。
波の音が全身に覆い被さるように大きくなった。
「…結果って、何のですか」
彼は急き込むように訊ねた。何か言わないと、今にもどこかにいなくなってしまうような気がした。
「補完計画だよ。俺は他の本部周辺にいた人間と一緒に補完された。
 後でわかったことだけど、補完の瞬間、皆は一番会いたいと願っていた人を幻視していたらしい。
 神様か誰かの配慮なんだろうな。個人、いや個体生命でいられる最後の瞬間に、最も会いたかった他者を
 見せる、ってのは」
「何を…言ってるんですか」
「既に起こったことさ。君は初号機の中にいたから多少違うかもしれないが、君だって
 会いたかった人と会えたんだろう?」

76 :ひとりあそび・27:02/12/24 16:24 ID:???
「だから…それがどうして青葉さんの報いになるんですか?!」
彼は混乱する頭を押さえて、遂に声を荒げた。訳がわからなかった。
「補完される瞬間、俺の前には誰も現れなかったんだよ。俺は最後まで誰もことも考えてなかった。
 だから神様も俺には逃げ場を与えてくれなかった。俺は計画本来の姿を見せられながら補完された。
 気が狂うほどの恐怖と孤独の下でね」
彼は固く耳を塞いだ。
聞きたくない。
もう、わかっていた。今自分が話している相手が何なのか。
「…もういいです、いいですよ…なぜ僕にそんなこと話すんですか。今更、どうしようもないのに」
目を見開く巨大な白い顔が瞼の奥に浮かぶ。瞬間的に生まれる赤い赤い目。
その神様だってもういないのだ。彼には何もできない。
「何もできないってことはないさ」
こちらの考えを読みとったように、声が言った。
「これで君は俺の”欠けた部分”を知ったろ? それは君の中にある欠陥でもある。
 俺にはもう何もできない。だが君には違う。まだ先がある。その時のために、
 よく考えるんだ。俺がどうして、どこで間違ったのかをね」
彼は無言できつく握っていた拳を開いた。空を掴み、放し、また力なく握る。手の中の闇は冷たかった。
彼はうつむいた。
同じ闇の中で、声はふっと笑いのようなものを含んだ。
「君には済まないと思ってる。最後まで優しい接し方って奴ができなかった」
でも、死者ってものは、得てして恨み言を言いたがるものなのさ。
それを最後に、声は嘘のように消えた。
彼ははっと顔を上げた。
途端に、視界が開けた。眩しさが網膜を射る。しばらく目を庇ってから、彼は頭上を見上げた。
岩山の影から欠けた月が昇ったところだった。
「…青葉さん?」
彼は無駄と知りながら呟いた。
月明かりに照らされた砂浜には、彼と初号機以外の足跡は残っていなかった。
青い光の下で、波が静かに打ち寄せ、また引いていった。

77 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/24 16:33 ID:???
以上、死者登場でした。
……鬱打死悩。

初号機出番なし。
青葉氏、説教してるし。
すんませんでした。何て言うか…ごめんなさい。

青葉氏って、悪気はないんだけど根本的に冷たい人かも、という俺的解釈、でした。
補完のシーンや、ここで書いた第拾九話「男の戦い」での対応とかから考えたものです。

マジに鬱打死悩。
でもたぶん、続く。

78 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/24 22:23 ID:???
イヤ いいです 実にイイ 
青葉シゲル総合スレッドに紹介したくなるくらいイイ


79 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/25 16:25 ID:???
>>78
ありがとうございます…
最高のホメ言葉です。すごく嬉しいです。
紹介、されるのなら、記念すべき「シゲルニュース」第一弾になるのでしょうか。
…シゲルニュース。
なんかイイ語呂ですよね。とか。

80 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/30 21:43 ID:???
保守sage

81 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:02/12/31 02:44 ID:???
>>80
ありがとうございます…
本当にいつもすみません。
今年はもう書けそうにないですが、年明けは某スレが暇そうなので、
こっちにたくさん書きたいと思います。
待たせてばかりで、ごめんなさい。

それでは、良いお年を。

82 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/06 01:57 ID:???
保守

83 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/07 09:44 ID:???
…あけましておめでとうございます。
今年の目標。
 「できない約束はしない」
情けなや。
>>82
本当にごめんなさい。

では続きを。

84 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/07 10:51 ID:???
気がつくと朝だった。
いつ眠ったのか、いつ目が覚めたのか、はっきりしない。
目を開けたら初号機が傍に膝をついて覗き込んでいた。その向こうに青空と流れる雲が見えた。
彼がまばたきすると、エヴァは立ち上がって視界から消えた。背中から伸びる
長い光の羽根が一本、エヴァの動きに従って緩やかに空中を泳ぐ。
彼はそれを目で追って、それから起き上がった。
また砂地の上に寝ていた。ふと横に目をやると、完全に消えた焚火の残骸が黒く残っていた。
砂を払って立ち上がり、大きく深呼吸してみる。途端に咳き込んだ。
空気はびっくりするほど冷たい。
同時に寒さの感覚が戻ってきた。半袖から出ている腕が、何か鈍い刃物で切りつけられるように痛む。
あまりに冷えきっているために、普段は感じない空気の抵抗が何倍にも増幅されているらしい。
寒さってある意味凶器だと思った。吐く息が白く凍る。
彼は両腕で身体を抱え、足踏みをしながら周囲を見回した。
湖は真っ白な靄に包まれていた。湯気のような蒸気の流れに隠れて、水面は見えない。
と、岩山の向こうから太陽の光が射した。
暖かい光が湖面に溢れる。最初の陽差しを受けて、靄が一斉にまばゆく輝き出す。
彼は目を細めて、光を放ちつつ融けてゆく朝霧の渦を見つめた。
背後で足音がした。
一瞬、昨夜の出来事が頭の中を走り抜ける。彼は大きく振り返った。
そこにはエヴァが立っているだけだった。
「あ…」
力が抜けた。無意識のうちに緊張していた全身が緩む。彼は唇を噛んだ。
やっぱり誰かに会いたくてたまらないのだ。
その癖、それと同じくらい強く、怖がっている。
エヴァ相手ならここまで動揺も不安も、期待も、感じないのに。
いつまでもこのままじゃいられない。でもまだ、どうすればいいかわからない。
彼は、自分よりかなり背の高いエヴァを見上げた。エヴァはごく静かにそこに立っていた。
何も応えず、何も表さず、何も示さないまま。

85 :ひとりあそび・29:03/01/07 13:53 ID:???
その日一日は湖の傍で過ごした。
日が昇ると、気温は朝の寒さが嘘のようにぐんぐん上昇し、あっという間に汗をかく程になった。
彼とエヴァは、最初日陰から日陰へうろつき回っていたが、それも真昼になると
影が短くなりすぎて無理になった。
湖の波打ち際まで、白い砂がじりじりと陽差しに焦げている。
そうなると避難場所はひとつしかない。
覚悟を決めて水の中に入った。自分でも驚くほど身体は水に馴染んだ。既に一度、
赤い海で泳いだからかもしれない。思いきって顔もつけてみる。
水の中は冷たくて明るく、思ったよりずっと気持ちが良かった。
ふと見ると初号機はとっくに沖の方まで泳ぎ出していた。
水を浴びてきらきら光る紫色の身体が、まぶしい波間から見え隠れする。エヴァが泳ぐなんて
思わなかった。なんだかよくわからないフォームの割に、泳ぐ速度だけはやたら早い。
彼は濡れた髪をかき上げて笑った。

86 :ひとりあそび・30:03/01/07 13:57 ID:???
しばらく遊んだ後、汗と埃で汚れきった服を洗濯して、干した。
ついでに運動靴も洗った。
エヴァは洗濯が終わる頃に戻ってきた。また魚を捕ってきていた。
昼の陽差しの下でよく見ると、それも小さい使徒だった。白い魚の形をした奴。
アスカと初めて会って、弐号機で一緒に倒した使徒だ。昨夜深く考えないで食べてしまったのは
これだったらしい。
彼はしばらく黙ってビチビチともがく魚使徒を眺めていたが、やがて笑い出した。
昨日、他の使徒に殺される青い使徒を見て怒りを覚えた自分が、そのすぐ後に
別の使徒を殺していたのだ。
結構、ショックだった。
にもかかわらず空腹、そして食欲さえ感じている自分がおかしかった。
腹の底から笑えた。笑いながら繰り返し涙をぬぐった。
この世界がイカレてるっていうなら、彼自身もとっくにその一部になっているのだと、思った。
…魚使徒は、イカみたいな固い皮をむいて、腹を開いて焼いて食べるととてもおいしかった。
コアはなかった。その代わり、内臓の中からたくさんの青いかけらが出てきた。
あの小さい青い使徒がこいつらの食糧だったらしい。
青い使徒を魚使徒が食べ、魚使徒を彼が食べて、それぞれ命を繋ぐ。
誰も死にたくないから、当たり前のことだ。
それだけのことだと思おうとした。
食事を済ませると、彼は昨日の戦闘の跡から青いかけらを拾い集めてきて、湖に撒いた。
昨日は青い使徒たちの墓を作ろうと考えていた。でも、たぶん、こうする方がいい。
エヴァはやっぱり何も言わなかったが、彼が何度も往復するうち、傍に来て手伝ってくれた。
エヴァと一緒に大量の青い死骸を抱えて歩きながら、彼は泣いた。
全て終わるまで、涙は止まらなかった。

87 :ひとりあそび・31:03/01/07 15:17 ID:???
最後まで水気が抜けなかった靴がやっと乾くと、もう夕方だった。
埃をはたいて靴を履き、早めにまた焚火を熾す。
少しずつ赤く染まっていく透明な空にぽつぽつと星が光る。
エヴァは妙に哲学的な顔をして、増えていく星を見上げていた。
彼はその横顔をときどき見つめながら夕食分の魚使徒を焼いた。揺れる火影に照らされた
初号機は、装甲の紫が色褪せてなんだか幽霊のように見える。でも、手を伸ばすと
確かにすぐそこに坐っている。
小さい子供のように、安心する。
本当はエヴァのことなど全然気にもかけていない癖に、そんなふうに頼る自分が許せなくて、
でもどうしようもなくて、言い訳する。今はエヴァしか頼れないから、自分は無力だから、
まだ死ぬ訳にはいかないから。そしてまた不安になってエヴァの方に手を伸ばす。
火がはぜる。
彼は頭を強く振って、厭な考えを頭から追い出そうとした。
「…明日になったら、ここを離れようと思うんだ」
口にしてみる。エヴァは星を見るのをやめてこっちを向いた。

88 :ひとりあそび・32:03/01/07 15:23 ID:???
「ここにいればとりあえず生きていけそうだけど、なんか、立ち止まるのが厭なんだ。
 ここには先に住んでる奴もいるしね」
食べ終わった魚使徒の骨を取り上げ、湖の方に投げる。水音。湖の方はもう真っ暗だ。
そういえば、と彼はエヴァを見た。昨日ならとっくに活動停止している時間なのに、大丈夫なんだろうか。
エヴァの背中からはまだ”日中用”の充電羽根が長く伸びている。
「…いいよ、休んでも」
気がつくと、ごく自然にそう言っていた。
エヴァは問いかけるようにこっちを見ている。彼はふと思い出して顔を強張らせた。
エヴァが止まった後、また誰か、声だけの誰かが来ないっていう保証はない。
もしかするとエヴァは、昨夜あれからあったことを知っているんだろうか?
彼は目つきの悪い顔から何か読みとれないかと、しばらく目を凝らしてみた。無駄な努力だったが。
でも、心配されてるのかも、と想像するのはなんだか嬉しかった。
「僕は大丈夫だからさ。無理しないでいいよ」
そう言って笑ってみせると、エヴァはしばし考えるような動作をし、光る羽根をするすると引っ込めた。
最後にちょっとだけ彼の顔を見る。そして、急にがくりと動かなくなった。
坐った姿勢のままのそれは、もう無機物にしか見えなかった。今の今まで動いていたのが嘘のように。
彼は不思議に静かな気持ちで停止したエヴァを眺めた。
それから、焚火に新たな流木を足して、星だか神様だかに真剣に祈った。
今夜は誰も来ませんように。

89 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/07 15:31 ID:???
たぶん、続きます。

訂正です。
>>84の名前欄、間違い。正しくは「ひとりあそび・28」

どこに行こう。
当初は赤い海から街を目指してた筈なのに、
サキエルシャムシエルから逃げる間にとんでもない方向に来てしまった気が。
順番から行けば次はイスラフェル…
もしくは他のエヴァ。
マトリエルなら、妙な生態ネタできてるんですが。

90 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/09 21:11 ID:???
つーか、海の次は順当に山でしょ、山

91 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/10 16:03 ID:???
ついでに最下層

92 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/10 17:09 ID:???
最下層と言われるとageたくなるne?

93 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/10 17:16 ID:???
あらら、いつの間に
とりあえず一日目の足跡ぺたぺた〜

94 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/10 20:51 ID:???
あのスレ以外認めん

95 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/10 22:30 ID:???
スレタイとしちゃ最低だスレが最強だったな

96 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/10 23:19 ID:???
http://www.content.loudeye.com/scripts/hurlPNM.exe?~mm-475124/0187197_0103_07_0002.ra

97 :山崎渉:03/01/11 04:54 ID:???
(^^)

98 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/11 15:17 ID:???
はつかきこでおま〜
きながにがむばってください
ぶくまくしてまつ

99 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/11 17:55 ID:???
最下層で

100 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/11 17:55 ID:???
100げと!

101 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/13 23:31 ID:???
恐怖の最下層生活@3日目

102 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/14 01:48 ID:???
イライラしてると思ったら三日目だったのか


103 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/14 05:44 ID:???
>>102
そうよ!もう3日も生理が来てないのよ!

104 :ひとりあそび・33:03/01/14 16:08 ID:???
誰も来ないまま、あっけなくその夜は明けた。
彼は寝不足の目をこすりながら、初号機の”充電”をぼんやりと眺めていた。
直射日光でなくともある程度の明るさがあればエヴァは動けるらしい。昨夜、日が暮れても
かなり長い間動いていたのは、焚火の明かりがあったからだろう。あとは内部電源、だろうか?
エヴァは彼が見ていようといまいとまるで無頓着に、じっと波打ち際に立っている。
今朝も湖畔は歯が鳴るほどの寒さだ。
もうじき日が昇るし、気温はすぐに上がるだろうけど、当分この寒さという奴には慣れることが
できそうにない。自分ではどうすることもできないし、ひたすら身を縮めて待つしかない。
おまけに、朝は魚使徒も寒さを逃れて水の底に隠れているらしく、食べるものもない。
身体は現金なものだ。意識した途端、空腹は我慢できないくらいひどくなった。
彼は慌てて鳴りかけた腹を押さえた。
なんだか、ものすごく惨めな気分になる。
でも、ここも厭なことばかりじゃない。彼は頭を振って顔を上げる。
冷たい靄の晴れていく湖の遙か向こう、あの巨大な青い使徒がゆっくりと移動していく。
最初見つけた時はこっちに来るのかと身構えたが、使徒はそんな気はさらさらないようで、
拍子抜けするほど悠然と動いていくだけだった。ナワバリの巡回でもしているのかもしれない。
見つめるうちに、鈍いブルーの正八面体は、聳える白い岩塔群の彼方に見え隠れしながら消えていく。
見えなくなる最後の瞬間、ちょうど昇った太陽の光を受けて使徒は巨大な宝石のように輝いた。
その周りに一瞬だけ浮かび上がる、きらきら光る銀細工の鎖のような環。小さい使徒たちだ。
それら全部が青く光ったかと思うと、使徒たちはもう視界から消えていた。
とても、幸せそうなカタチに見えた。

105 :ひとりあそび・34:03/01/14 16:09 ID:???
使徒たちにはちゃんと居場所があるんだと思う。確かに訳がわからないし、妙だし、
一見ぎょっとするようなあり方だけど、ちゃんとこの変な世界に属しているって感じがする。
たとえ他に誰も目撃者がいなくても、あの使徒たちは今と全く変わらないまま
存在し続けるだろう、そんな気がした。世界がどうであろうと関係なく。
それなら、彼と初号機は?
彼は両手を広げて、砂にまみれた手のひらを見下ろす。白い砂は陽に乾いてさらさらとこぼれ落ちる。
なぜ、今自分はここにいるんだろう?
痛む頭の中に何かが浮かびそうになった時、初号機が彼の前に立った。
瞬間、その何かは跡形もなく消えた。
彼は少しの間それを掴もうとあがいたが、やがて諦めて、ゆっくり立ち上がった。
そろそろ出発だ。
とりあえず、この峡谷を歩いていこうと思う。
本当なら海から見えた都市を目指したいところだけど、ここがどの辺りかなんてのは
最初からわからないし、それならどこをどう歩いても同じだと思い直した。
しばらくは湖沿いに進むつもりだった。いい道標になるし、何よりせっかく見つけた
水と食糧源だ。わざわざそれを捨ててまで他の道を捜す勇気は、彼にはない。
振り返ると、真っ白い浜辺に焚火の跡がそこだけ黒々と残っている。
始末していこうかとも思ったけど、やめた。
足跡だとでも思えばいい。
「…じゃあ、行こうか」
彼は軽く声をかけ、巨大な白い岩の落とす影の中へと歩き始めた。
エヴァはいつもの通り何も応えなかったが、彼が歩き出すとちゃんとついてきた。
やがて浜辺は重なる岩群の向こうに完全に見えなくなった。

106 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/14 16:27 ID:???
おお、これが噂の最下層ですか。いつのまに。
そして途端にヒトが増えるってのはどういうことでしょう? 嬉しいですが。
それが最下層のチカラなのでしょうか…
ともあれ、来てくださった方、読んでくださった方に心からの感謝を。
ありがとうございます。

>>90 
では、山、とは言えませんがしばらくはグランドキャニオン(もどき)紀行ってことで…
…駄目っすか?
写真集でも捜して、風景調べないと、とか思ったり。自分は無知極まりないのです。
>>91
最下層ですね。いつまでかはわかりませんが。
>>92
ageたければご自由にどうぞ。誰にもsage強要はできません。
>>93
いらっしゃいませです。見事な足跡っすね…保存しときますか。
>>94
できればスレ名をお教え願いたく。伝説のスレだったんですか?
>>95
確かに最強…というかハマりすぎっすよ。
>>96
??? なぜか入れませんでした。ごめんなさい。
>>97
全部のスレに出現、ですね。なんていうか…ご苦労さま、です。

107 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/14 16:27 ID:???
>>98
ありがとうございます。トロいし長文ですが、何とか終わらせたいと思っています。
>>99&>>100
おめでとうございます! 200も狙いますか? 相当遠そうですが。
>>101
自分はなかなか居心地がよろしいんですが、最下層って恐怖なのでしょうか?
>>102
失礼しました。でも、あれは某FFスレ内部の話です。あくまであそこでの話。
愚痴っていいよってんなら、ここで死ぬほど愚痴りますが…
>>103
僕、男ですよ、と言ってみる。

…言ってみただけです。


ではまた。
たぶん、続きますので。

108 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/14 20:35 ID:???
fg


109 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/18 00:51 ID:???
初号機っていいヤツかもsage

110 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/22 23:01 ID:???
深度219

111 :山崎渉:03/01/23 04:48 ID:???
(^^)

112 :ひとりあそび・35:03/01/23 15:30 ID:???
白い大峡谷は地平線まで続くように思えた。
彼と初号機は、聳える白い岩々の合間に光る、細長い地峡湖に沿って歩き続けた。
道とも言えない道をひたすらたどる。
道は登り、くだり、また登り、時に平坦になって、方向も幅もどんどん変えながら
続いていく。その度に、真っ白い絶壁が行く手を遮ったり、いきなり地面が落ち込んで
遙かな谷底を見下ろす高台に立っていたりした。
昼間はそうして歩けるだけ歩き、日の光が薄れてくると、湖に降りるルートを捜して
湖畔に戻る。火を焚ける時は焚いてひと晩眠ったら、翌朝は昼の分の魚使徒を焼き、
水を汲んで出発。
そんな日が何日続いただろうか。最初の頃は数えていたが、一度忘れたら
もう思い出せなくなってしまった。ただ、身体はだんだんこの生活に慣れていったから、
確実に時間が経っているだろうことはわかった。

113 :ひとりあそび・36:03/01/23 15:32 ID:???
あれからも、何度か使徒を見かけた。
彼らはものすごく自然にここに馴染んでいた。
最初に見たのは、アスカと一緒に倒した、あの分裂する使徒。
というか、その使徒の群れだった。
いつだったか、ふと頭上に聳える岩棚を見上げたら、その使徒の群れが渡っていくのが
偶然目に入ったのだ。
大きさは彼や初号機と同じくらい。いつかTV番組で見た羊だか山羊だかの群れのように、
群れは岩壁のわずかなでっぱりを足がかりに、そそり立つ岩から岩へと軽々と跳び移っていく。
あまりの数にぽかんとして見上げる彼の頭の上を、使徒の群れは
橋でもかけるように次々と通過し続けた。
彼らの移動する先、岩壁のひとつに幾つか穴が口を開けていた。
使徒のひとつが、少し群れからはぐれて穴の前を通ろうとする。
その瞬間、穴の奥から別の巨大な使徒が顔を出し、避ける間もなく分裂使徒に噛みついた。
見たことがない使徒だった。多分、アスカが浅間山で倒した奴だと、後で気がついた。
巨大な使徒はじたばたもがいている獲物を呑み込み、すぐさま次の使徒に襲いかかる。
が、今度は小さい使徒も食べられる寸前にぱっと分裂し、ひょいひょいと巨大使徒の
頭の両側を跳んで逃れた。巨大使徒は苛立ったように頭を振り回したが、やがて諦めて、
再び穴の奥深くに引っ込んだ。
彼はただ茫然とその光景を眺めていた。ちらっとエヴァの様子を窺ってみたが、
エヴァは気にする気配もなかった。使徒たちは更に無関心で、
こっちに興味すら持たないようだった。
遙か頭上の死闘をときどき見上げながら、彼はまた歩き始めた。

その夜はアスカのことばかり思い出して、いつまでも眠れなかった。

114 :ひとりあそび・37:03/01/23 15:33 ID:???
それからも、こっちに攻撃してこない、少なくとも手出しをしなければ攻撃してこない
使徒をいくつか見かけた。
たとえば緑色のクモ使徒。大きいのや小さいのが集まって群れを作り、
ひときわ巨大な岩塊に取りついてじっとしている。
最初は何をしているかわからなかったが、近づくと次第に見えてきた。
身体の下にある目玉からあの溶解液を出し、岩壁をどんどん溶かしているのだ。
溶解液が流れた後には、長い年月の風雨に削られたような、見事な岩の彫刻が残った。
この峡谷自体が、クモ使徒が時間をかけて作ってきた”作品”らしかった。
たぶん、初めは白い平原でしかなかった陸地を、彼らは少しずつ削ってきたのだろう。
彼とエヴァは彼らの”工程”を少しの間見物していた。
もうしばらく見ていたかったけど、すぐに自分たちの足元にまで溶解液が到達し、
白い煙を上げて足場を溶かし始めたので、慌てて逃げた。

一度、これまでになく高い場所まで登った時には、空に流れる雲のずっと上の方、
かろうじて見えるくらいのところを漂う使徒が見えた。成層圏から第三新東京市に
落下してきて、三人で受け止めた奴だった。薄っぺらい、冗談のようなデザインの
その使徒は、すぐに雲に紛れて視界から消えた。

模擬体のテストをやった時、本部に侵入したらしい使徒は見なかった。
たぶん見てもわからなかっただろう。ただ、細菌タイプだったって話だから、
もしかすると地下のどこかで繁殖してるのかもしれない。

使徒たちはそれぞれ勝手に、好きなようにここで生きているようだった。
自分でも知らないうちに、彼は使徒を異物として見るのをやめていた。
全部駄目になる前、彼の周りに他のヒトや蝉や車がいたように、ここには使徒がいる。
慣れると、それはそれで面白かった。

ただ、それでも使徒に対して警戒を解いてはいけなかったのだ。
その時は忘れていたけど、最初に襲ってきた人型使徒やイカ使徒のように、
彼とエヴァに明確な敵意を持っていた奴も、確かにいたのだから。
それからまもなく、彼は厭でもそのことを思い出す羽目になった。

115 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/23 15:43 ID:???
すんごい久々にひとりあそびさせて頂きました。
そもそものはじめ、ここで書くのはこういう話だけのつもりでした。
初号機と使徒がなんか訳わからん行動を取り、
シンジ君が脱力しつつそれにツッコむという感じで。
イラストでも描くように、フツーにイキモノしてる使徒を延々書いたりして。
どこで間違えたんでしょうね。

ともあれ。
来てくださった方、読んでくださった方、本当にありがとうございます。
>>109さん、確かに初号機は…イイ奴になってきてます…
いつもsage、ありがとうございます。
>>110さん、また最下層にいけますかね、このスレ?
来てくれて、書き込んでくれて、本当に感謝です。

そろそろ終わりに向けて何かせねば。
次回、エヴァvs使徒のバトル、
もしくは死者登場その2となります。

それでは、たぶん、続きます。

116 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/24 04:31 ID:???
>>115
まんばれー
いつのまにかつづきがきててうれ(・∀・)すぃ

117 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/03 23:33 ID:???
保守さげ

118 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/05 11:30 ID:???
ほっしゅほっしゅ

119 :ひとりあそび中の人:03/02/05 13:20 ID:???
…お久しぶりです。
訳あってメール欄が変わってますが、ここでひとりあそびしてる者です。
十日以上開けちゃったんですね…
保守してくれた方々、心から感謝します。ありがとう。

今回はちょっと長いです。
まずは第一弾をどうぞ。

120 :ひとりあそび・38:03/02/05 13:23 ID:???
その日は、いつもより日差しが厳しかった。
風もなく、うだるような暑さの中、じりじりと影だけが動いた。
道は白く埃っぽく、熱された岩の尖塔の間にのぞく青空は陽炎に揺らぐ。
頭上に突き出す岩々が落とす影は濃いだけでひどく短く、ちょっと立ち寄って
休むだけのスペースすら見つからなかった。
朝汲んだ水はとうになくなっている。
しかも最悪なことに、いつのまにか湖から離れてしまった。
少し前までずっと岩の隙間から水面が見えていたのに、今はもう
それらしい反射光すら見えない。
ついさっき、道が少し厄介な登りになった時に見失ったらしかった。
そこを抜けるのに気をとられて、周囲の確認を怠ったのがまずかったんだと思う。
入り組んだ岩の隙間を苦労して抜けた後、ようやくなだらかになった道にほっとして、
かなりの距離をそのまま進んでしまったのだ。ふと思い出して周りを見渡した時、
もう湖は影も形もなくなっていた。

121 :ひとりあそび・39:03/02/05 13:25 ID:???
気づくのが遅すぎた。
今どこにいるのか、完全に見失ってしまった。
戻るにしても、もともとちゃんとした道ではない。一度方向感覚を失えば、もと来た
方を正確に見つけることすらできない。白い岩はどれも同じように立ち並び、
その隙間はどこも似たような道になって誘うように岩陰に続いている。もろいけど
それなりに堅い岩床には、足跡のひとつも残っていない。
熱い空気の中で、周りの景色がぐるぐる回り出すような眩暈。
今更のように全身が凍りついた。
無茶でもここまで歩いてこられたのは、必ず湖に戻れるという保証があったからだ。
湖からはぐれたら、エヴァはともかく、彼など一日も生き延びられない。
急に喉の乾きと手足のだるさがひどくなり、忘れていた恐怖が全身を打ちのめした。
死ぬかもしれない。
ゲームオーバーとかじゃなく、本当に死ぬのかもしれない。
どこかの誰かが、じゃなくて、自分自身が。
他の誰でもなく、今、ここにいる、自分が。
彼は無言のまま恐慌に陥った。
静かだった。声も出せず、暴れる気もしなかった。ただ手足の先から冷たいものが
身体じゅうを浸そうと上がってくる。
それに呑まれたらおしまいだと思った。本当に動けなくなる。
彼は熱い息を意識してゆっくり吐き出し、強張った首を苦労して曲げ、傍らのエヴァを
見上げた。顎の先から冷たい汗がしたたり落ちた。

122 :ひとりあそび・40:03/02/05 13:27 ID:???
初号機は、いつものようにただじっとそこに立っていた。
焦ることもなく、動じる気配も見せず、彼の方を見ようともしない。
それを見た瞬間、頭の中で何かが弾けた。
身体を這い登る冷気が熱い何かに変わって一度に逆流する。彼はエヴァに飛びかかって
その身体をめちゃくちゃに殴った。
「なんだよ! なんで止めてくれなかったんだよ! 僕が間違ってるなら、
 そう教えてくれてもいいじゃないか! どうして黙ってついてくるんだよ!
 どうして何もしないんだよ!」
強い日差しにさらされた胸部装甲は火傷しそうに熱かった。彼はその熱さに向かって、
逆に痛みを求めるように拳を打ちつけ続けた。エヴァは抵抗もせずにそれを受けていた。
湯の中で動いているように身体が重く、汗と熱気が皮膚の感覚を奪う。それが彼を
余計に逆上させた。
頭の中のどこかで、冷静な自分が殴り続ける彼を冷ややかに見ていた。
こんなことしても何にもならない。
エヴァはもともとどこかに連れてってくれるなんてひとことも言ってない。こっちが
勝手にここまで連れてきただけだ。エヴァは黙ってついてきてくれた。助けてもくれた。
今回のこれは単にこっちのミスだ。ただこっちが上手くやれなかっただけじゃないか。
そもそも、エヴァには何も期待してないんじゃなかったのかい?
彼は頭の中でわめいた。
わかってる。それくらいわかってる。わかってるんだ。
でも、じゃあどうすればいい? エヴァはいいさ、どこだって生きていける。
けどこっちは死ぬかもしれないんだ。本当に死ぬかもしれないんだ。
どうしようもないんだよ。怖くて仕方がないんだ。
なのに助けてくれないんだ。
何もしてくれないんだ。
…だったら傍にいてくれなくたっていい!
ふいに頭の奥が白熱した。叫んでいた。

123 :ひとりあそび・41:03/02/05 13:28 ID:???
「もういい! もうお前なんかいなくていい! いなくなれ! 消えろ…そうだ、
消えろ! 今すぐ、僕の前から!」
叫びながら彼はエヴァから身を離し、大きく下がった。
自分の荒い息遣いがやたらに拡大されて聞こえている。
その瞬間、ふいに冷めた。
狭窄していた視野が開ける。風化した岩から零れ落ちる砂の、ごくかすかな音が耳に届く。
彼は呆然と立ちすくんだ。
今、なんて言った?
何を言った?
エヴァは黙ってこっちを見つめている。ひたすら殴っていた彼を受け止める姿勢のまま。
装甲に覆われた顔からは何の表情も読み取れない。
彼は目を見開いた顔で、かすかにかぶりを振った。
その動きはだんだん激しくなり、自分でも止められないまま、彼は何を否定するのかも
わからずに固く目をつぶり、耳を塞いだ。
そして、その場の全てに背を向けて走り出した。
めちゃくちゃに走った。方向感覚なんかとっくに消えている。自分の足音だけ聞いていた。
何も見えなかった。見ようとしていなかったのかもしれない。
また逃げている、そのことだけが、彼をひたすら駆り立て、どこでもないどこかへと
走らせ続けた。どこにも行き着かないのはわかっている。今逃げ出したいのは、
他の何でもない、自分自身からだったから。
逃れようのないものから逃げようとして、彼は全力で走り続けた。

124 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/05 13:40 ID:???
第一弾でした。
なんか、逃げてます。
一度はケンカするのがお約束、ということで…

>>116さん、来てくれてありがとうございます。
書き込んでくれて、こっちもすごく嬉しいです。
まんばって…みます。大体話の終わりが見えてきました。完結、できるかも。

>>117さん、さげ、ありがとうございます。
sageでなくてさげ?ですか? ひらがなもイイなぁとか思ってみたり。

>>118さん、保守ありがとうです。ニアミスでしょうか。
…っても二時間前か…うう。ごめんなさい、待たせてばかりで。

では、第二弾です。

125 :ひとりあそび・42:03/02/05 13:43 ID:???
疲れきって立ち止まるのと、日が落ちるのと、どっちが早かったか覚えていない。
気がつくと彼は地面に仰向けに寝ていた。
夕方だった。
少しずつ光を失ってゆく空が正面にあった。星はまだ出ていない。ごく薄い雲がひとすじ、
色褪せた空の底を流れている。
彼は空を見上げていた。
力つきて、もう手も上げられない。目を閉じるのさえおっくうだった。他にできることが
何もないから、ただ空を見ている。
たぶん、ここでこのまま死ぬのだろう。
混乱した頭にはそれくらいしかまとまった考えが浮かばなかった。もうどうでも良かった。
ただ、初号機のことは、繰り返し思い出した。
心配しなくてもエヴァは大丈夫だろう。ここでちゃんと生きている使徒たちの間で、
彼らと同じように、上手くこの世界でやっていける。彼がいなくても。
それでも、気にかかった。
エヴァが傷つくことがあるかどうかは知らない。ヒトのような考え方をするかどうかも、
そもそもわからない。
でも、自分のことならわかる。
もし彼自身があんな言葉をぶつけられたら、きっと耐えられない。
見捨てられたという思いから立ち直れるかどうかも怪しいし、たとえ立ち直れても、
長い間その傷を忘れることはできないだろう。
だから、もしエヴァがそうだったとしたら、一生自分を許せなかった。どれだけ辛いか、
たとえ自分勝手な思い込みだとしても、それだけは理解できるから。
もしこのまま、誰もいない場所で野垂れ死ぬのだとしても、許せなかった。
涙が乾いた頬を伝った。

126 :ひとりあそび・43:03/02/05 13:44 ID:???
エヴァに会いたかった。
会って、謝りたかった。無駄でもいい。何か言いたかった。あんなひどい言葉じゃなくて、
少しでも違う言葉を言いたかった。
誰かを傷つけたと思うのは、それだけで辛すぎる。相手がここにいないならなお。
自分が傷つくより何倍も、何倍も辛い。
でも。
その同じ心が、エヴァと会うのを同じくらい怖がっている。
また会って、拒絶されたら。
拒絶されるのは厭だった。必要とされないこと。自分の存在が否定され、
ここにいなくても構わないと言われること。その痛みも、よく知っている。
だから、心のどこかで、今自分が動けない状態にあることにひそかに安堵しているのに、
彼は気づいてもいた。
エヴァに会わなくてもいい口実になるから。否定したくても、その思いは確かにある。
やっぱり逃げているのだ。
卑怯で、臆病で、ずるくて、弱虫で。
自分が厭だった。嫌いだと思った。
こんな、大事だとわかっていることからも逃げ出そうとする自分が、大嫌いだった。
彼は泣き続ける力もないまま空をみつめ、それから間もなく、半ば気を失うように
真っ暗な眠りに落ちた。

127 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/05 13:47 ID:???
第二弾でした。
次が第三弾、死者登場なのですが、なんだか
書いているうちにどんどんどんどん長くなってしまいまして…
某スレでも長文化に困ってるのですが、
まさかこっちにまで伝播するとは。
冗長だとは思いますが、よろしければおつき合いくださいませ。

では、今回のラスト、第三弾です。

128 :ひとりあそび・44:03/02/05 13:50 ID:???
誰かの気配を感じて、目が覚めた。
途端に、彼は寒さに身を震わせた。凍るような空気が身体を包んでいた。
「…誰」
しぼりだすように出した声は、乾いてかすれていた。それでも相手には聞こえたらしく、
彼の上に身をかがめる気配がした。触れようとする手を感じる。でも、いつまで待っても
その手が彼に届くことはなかった。
彼は疲れた目を開け、ぼんやりと闇を透かし見た。どうせ何も見えないことは
わかっていたけど。
「誰…?」
もう一度訊いた。
しばらくして、何度も聞いたことのある声が応えた。
「しばらくね。一時はどうなるかと思ったけど、ひとまずは無事で良かったわ」
「リツコさん…」
彼は微笑み、同時に新たな涙が流れるのを感じた。
このヒトももう死んでいるのだ。
赤い海の中にいた時、なんとなくそうじゃないかという気はしていた。でも、こうやって、
確かにそうだと思い知らされるのはそれなりに辛かった。

129 :ひとりあそび・45:03/02/05 13:51 ID:???
「…リツコさんは、僕に何を言いたいんですか」
「あら、単刀直入ね」
闇の中の声は少し驚いたようだった。
「青葉さんに、もういろいろ聞きましたから」
彼が答えると、声はかすかに笑いを含み、そうだったわね、と言った。
彼は頭を横に向けてみた。相変わらず何も見えない。でも、目を閉じると、
誰かが隣に腰を下ろしているという感じがはっきり伝わってきた。見えなくても、
確かにそこにいるのだ。
「…父さんのことでも、訊きたいんですか?」
声は今度は明らかに笑った。ほとんど悪意の響きがあった。
「何を言うの。あの人のことなら、私の方があなたなんかよりずっとよく知ってるわ」
彼は一瞬言葉に詰まった。無意識に数回まばたきした。
「そう…ですか。…そうですよね」
「訊きたいのはあなたの方なんじゃなくて? “ずっと一緒にいなかった”んでしょう?」
彼は瞼の奥の闇を見つめた。自問してみる。父さんのことを、今でも知りたいのだろうか。
少しして、彼は首を振った。
「…いいです。父さんのことはずっとわからないままでもいい。
 父さんが何をしたかったのかだけは、あの時、わかったような気がしますから」
声は少し不穏なかげりを帯びた。
「それがあなたの思い込みだとしても?」
彼は頷いた。

130 :ひとりあそび・46:03/02/05 13:52 ID:???
「思い込みでも、いいです。わかってるんです、本当は誰も誰かのことをわかるなんて
 無理なんだって。誰も、他の誰かの言葉や態度で、そのヒトの気持ちを
 勝手に想像してるだけなんですよ。だったら、一緒にいた時間が長いか短いかなんて…」
彼は普通に言ったつもりだった。
だが突然、声は身を縮めたくなるほどの怒気を帯びた。
「黙って。あなたにあの人の何がわかるって言うのよ。…子供の癖に」
彼は目を開けた。星は見えなかった。
自分を見失うほどの闇が辺りを押し包んでいた。
「あの人の子供だというだけで、いつもあの人の方ばかり見ていて。
 …レイと同じよ。何もわかってない癖に。いつもそれを見せつけられていた
 私の思いなんか何も知らない癖に。…厚かましいわよ、あなた。
 あの女と同じ顔で私を見ないで」
声は震え、激しては低くなり、また荒くなった。
「あの人が最後に何て言ったか知ってる? 知らないでしょうね。
 あそこにはあの人とレイと私しかいなかったもの。
 あの人は最後の最後で私に言ってくれたのよ。私はそれが嘘だとわかってる。
 でも、信じてしまうのよ、それがあの人が私に言ってくれた最後の言葉だから」

131 :ひとりあそび・47:03/02/05 13:54 ID:???
彼は口を挟まなかった。
いつか、この人は同じ声で、同じことを言っていた。彼を呼んで、水槽に浮かぶ
たくさんの綾波を壊した時だ。
同じ、こっちが身を切られるような声で。
でも、あの人は。あの人は。あの人は。
彼はあの時何も言えなかった。今も、何も言えないだろうと思った。
ミサトさんが泣いていた時と同じだ。そのヒトの本当に大事な心には、誰も入り込めない。
声は既に彼がそこにいるのすら忘れたかのように、むせび続けた。
「わかる? わからないでしょうね、最後の言葉なんてものは。
 それが真実であれ嘘であれ、言われた方にとってはそれが絶対になってしまうの。
 疑おうとしても、信じようとしても、駄目。そこからずっと離れられないのよ。
 あの人のあの眼差が、あの声が私を縛り続ける。
 あの人はもうあの女のところへ行ってしまった。
 でも忘れられないのよ。忘れるなんてできない。その前に私は死んでしまったから。
 取り残されて、あの人に殺されてしまったから。わからないでしょうね、
 いえ、わかるものですか。誰にもわかる筈はないわ」
声は言葉を続けるたびに、より低く、より暗い響きを増した。それだけで
誰かを殺せそうなほど、救われない、絶望に満ちた声だった。
彼はぼんやりとかすんできた頭を振った。疲れと無気力が全身を覆っていた。
何もわからなくなりそうだった。

132 :ひとりあそび・48:03/02/05 13:55 ID:???
「…リツコさん」
ほとんど全身の力を使って、声を出した。
その途端、呪詛の声がぷつんと途切れた。
彼は待った。闇の中で息をひそめている気配がした。こっちの出方を待っているのだ。
だから、続けた。
「リツコさんは僕が嫌いなんですよね」
少し間があった。
「…いえ、…どうでも良かったわ。最初の頃はね」
穏やかとは言えないまでも、もとの静かな調子に戻りかけていた。彼は続けた。
「でも、僕はリツコさんが好きでした。…全部ひっくるめて好きだったなんて
 言えませんけど。苦手だと思ったこともあったし、リツコさんのことは、
ミサトさんとは違ってほとんど知らなかったから」
「…だから、何なの」
声はぴしゃりとはねつけた。彼は必死で言葉を押し出した。どうしてこんなに
焦っているのかわからなかった。
「でも、リツコさんのことは頼りにしてたし、
リツコさんがいて、楽しいと思えた時だってあるんです、ミサトさんちで
一緒にご飯食べた時とか、ミサトさんの昇進祝いのパーティーやった時とか…
僕だけじゃないですよ。ミサトさんも加持さんも、リツコさんのことは
好きだったんだと思います。ネルフの人たちだって
リツコさんのこと慕ってたじゃないですか。
…それだけじゃ、駄目なんですか。そういうの全部より、父さんの方が
いいんですか。そんなに辛い思いしてまで」
彼は一気に言った。
声は、嗤った。

133 :ひとりあそび・49:03/02/05 13:58 ID:???
「だからあなたにはわからないと言ったのよ。駄目ね、こんなことだろうと
 最初から想像はついていたのに。
 あなたにはわからないわ。ミサトにもたぶんわからない。加持君なら
 少しはわかってくれるかもしれないけど、所詮男だもの。
 私もあなたのことはわからない。あなただってさっき
 言ったでしょう、何もかも思い込みなのよ。ヒトは一人なの、最後までね」
「だったら父さんに縛られる必要だってないじゃないですか! そうでしょう?!」
彼は叫んだ。
叫んだつもりだった。実際にはかすれた声しか出なかった。
「愚問ね」
声は再び暗く沈んでいた。
「それが私の望みなのよ。こうしていれば、少なくとも
 あの人のことをずっと考えていられるもの」
彼は黙った。
「あなた、それで私が涙でも流して、私が間違ってた、皆のことを忘れてたわなんて
 言うのを期待していたのかしら。それもいいわ、それが妥当な行動ですものね。
 でもそうなって、それでどうなるというの。
 そんなことで一時的に変わったって、あの人への思いが消える訳がないじゃないの。
 自分の言うことを聞き入れてもらえたあなたが、その時だけ気持ち良さを
 感じるだけよ。私だって、こうしてあの人を思い続けても、
 それが何もならないことくらいわかっているわ。
 所詮自己満足なのよ。ヒトを理解しようとするなんて」
声は嗤いながら泣いた。
そして、闇の中でふっと何かが立ち上がった。声が遠くなる。
「もう行くわ。これ以上ここにいてもあなたを傷つけるだけにしかならない。
 無駄だとわかっているのにやめられない。やっぱり人間はロジックじゃないのね。
 理屈で抑え込んでも、割り切れない部分が増えるだけだもの」
彼は片手を持ち上げようとした。どうしてそんなことをしたのかわからなかった。

134 :ひとりあそび・50:03/02/05 13:59 ID:???
腕は少しだけ上がり、また地面に落ちた。
「リツコさん…」
「…死者はどこに行くんでしょうね? 私にもまだわからないのよ。
 だからこんなところに来たんでしょうけど」
気配はさらさらと遠ざかり始めた。彼は必死で呼びかけた。
「リツコさん、待って…あと少し、ひとことだけ、聞いてください」
言いながら、彼は自分でも驚いた。気の利いたことなんか何も思いついてない。
それでも、気配は止まり、たぶん振り向いた。
何か言わないと。
でも何ひとつ浮かばない。彼はひどく焦り、考え、そして一瞬気が遠くなった。
その時、ふっと言葉が浮かんだ。
彼は乾ききった喉に固い唾を飲み込み、ゆっくりと言った。
「…父さんを、捜してあげてください」

135 :ひとりあそび・51:03/02/05 14:00 ID:???
気配が動いた。
「何を言ってるの。あの人はあなたのお母さんのところに…」
「違う、違うんです。母さんは死んでなんかいない。だから父さんは、会えたかも
 しれないけど、母さんと一緒にいる筈ないんです。母さんはエヴァの中に残ってる」
声は絶望と憎しみを込めて笑った。
恐ろしい笑い声だった。
「私を捨てた人が捨てられたっていうの? 出来過ぎね。お笑いぐさだわ」
彼は泣きそうになりながら、言った。
「だから、父さんを捜してください。死んだらどこに行くかなんてわからないけど、
 父さんがリツコさんと同じ場所にいるかもわからないけど、でも、
 捜して、それでちゃんと会ってください。
 このままじゃリツコさん、自分で自分を追い込んでくだけじゃないですか。
 それじゃ…逃げてばかりいた僕と変わらないですよ」
笑い声は止まった。
重い空気が彼を包み込んだ。身体が押し潰されそうだった。

136 :ひとりあそび・52:03/02/05 14:01 ID:???
長い時間が経った気がした。
それから、再び彼の近くで声が言った。
「…では、あなたもそうすると約束なさい」
「約束…」
「あなたも、捜して、もう一度会って、自分なりに決着をつけると約束するの。
 その相手は、自分でわかっている筈よ」
彼は目を閉じて微笑んだ。声は彼のよく知っている声だった。穏やかで、
少し厳しくて、しっかりした声。また涙が伝い落ちた。ひと目顔を見たかった。
不可能なのはわかっていたけど。
「…エヴァのことですか」
「いえ、ヒトの話をしているの」
声は何か言いかけて、少し言いよどみ、結局やめた。
「そこから先はあなたが考えることだわ。最後は自分で決めなさい、ミサトが言った
 ようにね」
彼は頷いた。
「…約束します。だから、リツコさんも」
気配は闇の中で頷いた、ような気がした。少し濃い色のルージュを塗った唇が、
あの頃何度か見たようにきゅっと吊り上がる様子が、見える気がした。
「でも確かに、そのためにはまずエヴァを何とかしなくてはね。
 エヴァはあなたが思っているほど強くはないわよ。パイロットがあってこその
 兵器だもの。どんな形であれ、ヒトの手が必要な場面はあるわ。
 あの初号機だって例外ではないの。それを忘れないで」
声はあの頃よく聞いた、彼や伊吹さんに指示を下す時のきびきびした
調子に戻っていた。それが訳もなく嬉しかった。
「リツコさん」
彼は目を閉じたまま呼んだ。もう一度声が聞きたかった。

137 :ひとりあそび・53:03/02/05 14:03 ID:???
「…リツコさん?」
目を開けた。
涙でぼやけた視界がはっきりすると、満天の星が目の前を覆っていた。
息を呑むほどに綺麗な眺めだった。
もう、行ってしまったのがわかった。
彼はしばらくそのまま横たわっていたが、やがて少しずつ手足をほぐし、
時間をかけて起き上がった。寒さは厳しく、身体じゅうが凍りつきそうに硬くなっていた。
思ったよりヤバかったのかもしれない。
とにかく、今はやることがあった。
エヴァを捜そう。今度は拒絶されてもいい。
突然いなくなってそれきり、というのは、必ず相手を縛る。言葉を残したならなおさら。
優しい言葉でさえあれだけヒトを束縛するんだから、ひどい捨て台詞を投げつけられたら
どうなるかは、考えるまでもなかった。
彼は苦労して立ち上がると、星明かりに浮かぶ峡谷を見渡して、ふと目を凝らした。
拍子抜けするほど近くに、あの湖が見えていた。
昼間迷ったところからほんの谷間ひとつ向こうだったらしい。
彼はよろよろと歩きながら笑った。絶体絶命だと思っていた状況だって、こんなに簡単に
解決してしまうことがある。
だったら、自分の意思ひとつで変わる状況なら、いくらでも変えられる。
変えられない筈がなかった。

138 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/05 14:19 ID:???
………ドサリ
第三弾、死者登場その2でした…
読んでくれた方、お疲れさまでした。

自分は要するにリツコさん嫌いなんですかね…
シンジ君、説教かましてますし。
リツコさん好きな方には申し訳ないです…

一応、今回はここまでとさせて頂きます。
続きは頭の中にあるんですが、自分の場合、それが文章の形に
なってくれるのがえらく遅いのです。
なかなか出てきてくれないというか。
一度出てきてくれると、今回のようにうわうわもういいよ〜というくらい
続いてくれるんですが、そこまで行くのがどうも…

という訳で、次はいつになるやら、です…
次回、今度こそ使徒が出ます。>>114の最後でそれっぽいことを書いたので、
ちゃんとそれを書かなければ。
その後、そろそろ街に着く予定です。
よろしければ、見てやってください。
それでは、たぶん、続きます。

139 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/06 13:12 ID:???
キテタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!

(´-`)ノ旦~ オツカレサマ モチャ ドウゾン

140 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/08 10:00 ID:???
ほぜん

141 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/09 19:17 ID:???
ほっほっほほほ

142 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/12 00:43 ID:???
おつかれsage

143 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/17 01:53 ID:???
ほし

144 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/19 11:10 ID:???
……随分ご無沙汰ですが、戻って参りました。
ここでひとりあそびさせてもらってる者です。

保守してくれた方、読んで書き込んでくれた方、心から感謝します。
圧縮あったみたいだし、とっくにここ消えてると思ってたので、
今かなり感動気味であります。
本当に、ありがとうございました。

二週間。…二週間間が空いたんですね…
その間何をしてたかというと、このスレでは初の試み!でしたが、
直接掲示板に書いていくのではなく、ファイル作って(自分はWordなのですが)
文章校正という奴をやっていました。
結果はお約束通り修正の嵐、そして泥沼化。
書いても書いても、直しても直しても糞になるという悪夢。
で、開き直りました。
今後はまた書いたなりにすぐ書き込むことにします。
その方が、時間空けなくて済むし、無駄にいじらなくて済みます
(あとで読み返して絶叫するハメにはなりますが)
っていうか二週間も空けるなんて最低だ自分。

長々と前口上すみませんでした。
とりあえず続きを。
ささやかながら退屈しのぎにでもなれば、幸いです。

145 :ひとりあそび・54:03/02/19 11:11 ID:???
透きとおったさざなみが浜辺を洗う。
沖から寄せる波は思いがけない速さで足元まで迫り、薄く広がって
すばやく砂地を覆う。一瞬で浅い水底に沈んだ砂粒が、水の流れにあおられて舞い上がり、
揺らいではまた逆方向に押し戻される。
波が引いた後も、濡れた砂浜はしばらく鏡のように空を映した。
次々と波は押し寄せて重なり、ひとつひとつの痕跡はどこにも残らない。
眩暈がする。
彼は強い日差しから目をかばいながら、波打ち際を歩いていた。
これまでになく長い浜辺だった。白い砂が弧を描いてずっと向こうまで続いていた。
深い色の湖水を挟んだ対岸には、真っ白な岩壁がじかに湖面から突き出てそそり立ち、
その裾の辺り、影になったところに、遠い水面の乱反射が映って揺らめいている。
目が痛むほど青い空は散乱する光に満ちていた。
彼は急ぐでもなくゆっくりと浜辺を進んだ。
ときおり足を止め、何度も頭をめぐらして周りを見渡す。捜しているのは、峡谷のどこか、
それとも浜辺の遥か向こうに見えるはずの、あざやかな紫の一点だ。あれだけ派手な色なら
どんなに遠くからでも見つけられる。必ず。そう自分に言い聞かせて、また疲れた足を動かす。
けれど、目に映るのは、砂の白、峡谷のアイボリー、水と空の色、そして足元に落ちる
くっきりした影の黒。
見渡す限り、世界にそれ以外の色彩は存在しなかった。

146 :ひとりあそび・55:03/02/19 11:11 ID:???
「…リツコさんと約束した」
濃い影を落とす岩陰で、彼は何度目かにひと息つき、呟いた。
「ミサトさんとも約束した。…思い出さないようにしてた。でも、
 ほんとはずっと忘れてなかった。僕はまだ、全然しっかり生きてない」
身体じゅうが火照っていた。岩に寄りかかった背中だけ少し冷たい。
垂らした腕の先で、手のひらに熱い空気を掴み、放し、また拳を握り締める。
彼は波の上に踊る光をきつく睨んだ。
「だから、死ねない。僕はまだ何ひとつしっかりやってないんだ」
だからエヴァを捜す。
エヴァは必ず何かの突破口になる。こんな曖昧な状況はもうたくさんだった。
目が覚めたとき、エヴァが傍にいたのにはきっと意味がある。それがこのイカレた世界の、
彼には見えないルールのひとつなのだ。だったらそれを追求するまでだ。
それを追いかけて、突きとめて、ここが何なのか知る。
そして、決める。
何を決めるのかなんてわからなかったけど、そうなるという予感がした。
あのとき赤い海の中で、もう一度戻ると決めたように、今度も決断する。
それは自分一人だけのことかもしれないし、それで何が変わる訳でもないかもしれない。
それでも、何かは起こる。そしてそれにはエヴァが必要なのだ。そんな気がする。
彼はぼんやりしてきた頭を強く振って、また眩しい日差しの中に歩き出そうとした。
ふと、その足が止まった。

147 :ひとりあそび・56:03/02/19 11:12 ID:???
足元に違和感があった。
なんだろうと思った瞬間、全身にぞくりと厭な震えが走った。
深く考える前に彼は思いきり駆け出していた。とにかくその場にいたくなかった。
もう充分と思うところまで走りきってから、振り向く。
二度と見たくなかったものが見えた。
さっきの岩が、直径10mほどの真っ黒い平面の中に静かに呑み込まれていくところだった。
彼の背より遥かに高かった筈の岩は、五秒もたたず、あっさり影の中に没した。
岩を完全に呑むと、黒い円はすうっと他の影に吸い込まれて見えなくなった。
「…使徒だ」
彼はぽつりと呟き、無意識にさらに二、三歩後ろに下がった。
その足がずぶりと沈んだ。
反射的に下を見る。あの黒い影がいつのまにか足元まで移動してきていた。
「…っ、厭だっ!」
彼は必死でもがいた。影に捕らえられた片足は、固まりかけた泥にでも突っ込んだように
重くなり、見る間に足首の辺りまで黒の中に沈んだ。
また、あの何もない空間に取り込まれることを思っただけで、息が詰まった。しかも
今度はエヴァはいない。絶対に助からない。
彼は無我夢中で暴れた。
と、いきなり身体がぐらりと傾いた。
その拍子に、沈みかけていた足が抜けた。勢いあまって身体が前に投げ出される。
続いて、彼は固い平べったい何かにもろに叩きつけられていた。とっさに顔の前に
出した肘が擦れ、焼けるような痛みが走る。砂の感触。
地面がある。
彼はがばっと顔を上げた。
身体はまだちゃんと地面の上にあった。
白い砂を掴むようにして頭を起こし、振り返る。服にくっついた砂がぱらぱらと落ちた。
影は消えていた。

148 :ひとりあそび・57:03/02/19 11:13 ID:???
どっと力が抜けた。
気がつくと、ひどく汗をかいていた。彼はそのままうつぶせに砂に突っ伏した。
今更のように恐怖が押し寄せてきた。
身体じゅうがガクガク震えている。動きたくない。このまま何もせずにうずくまっていたい。
けれど、彼は無理やり起き上がった。
両肘をつき、上半身を持ち上げ、砂の上に座る。それだけのことに二分近くかかった。
言うことを聞かない脚を引き寄せ、さっき影に沈みかけた片足に触ってみる。
そこは冷えきっていた。足首から先の感覚が、まるでなかった。既に彼の身体から切り離されて、
ただの物体になってしまったかのように。
それでも、熱い砂の上で根気よくさすっているうちに、次第に皮膚の感覚が戻ってきた。
恐る恐る足に力を入れてみる。氷の塊のようだった足は、ぎこちなくだったが、
何とか元のように動いてくれた。
彼は大きく息をつくと、すぐに立ち上がった。少しよろけたが、構わず歩き出す。
あの使徒があれで行ってくれたとは思えなかった。
必ずまた戻ってくる。それだって根拠はないけど、安全だという方に賭けてみる気はない。
彼は岩群から伸びる影を避けて、波の打ち寄せるぎりぎりのところを進んだ。
歩くうちに足取りは次第に速くなり、しまいには全力で駆け出していた。
水と白く光る砂を蹴散らして走りながら、彼は何度も周囲に落ち着きなく視線を走らせた。
立ち並ぶ岩の落とす影が浜辺に短い縞模様を作っていた。そのどれもが使徒に見える。今にも
その間から、あの真っ黒い染みが出てくるような気がする。
寄せる波、どこまでも続く砂浜がぎらぎらと目を射た。
めちゃくちゃに走ったせいですぐに息が続かなくなった。脚がもつれる。彼はふらつき、
何度か蹴つまずいて、とうとう立ち止まると膝に手をついてきれぎれに荒い呼吸を繰り返した。
その彼を、巨大な影が覆った。

149 :ひとりあそび・58:03/02/19 11:16 ID:???
苦しさも眩暈も即座に吹っ飛んだ。頭上を振り仰ぐ。勝手に目が大きく見開かれた。
巨大な白黒の球体が太陽をさえぎって浮かんでいた。
震える線で描かれた白黒の縞、幾つもの目のように見えるそれが、彼をその場に射すくめた。
見間違えようがない。
いつかと全く同じ光景だった。
影使徒の“影”、虚像の球体。本体はその真下にいる。彼を覆い尽くした影の中に。
駄目だ、と思った。威圧するように頭上に浮かぶ球体から目が離せない。足が動かない。
ゲームオーバー。
その瞬間、何かが静止した空気を引き裂いた。
振り向く間もなく身体が何かにぶつかった。視界が回る。続いて、見開いたままの目に
いきなり飛び込む強烈な日差し、思わず閉じた瞼の奥の赤黒い闇。連続する衝撃。
そして、長く砂を舞い上げて着地する振動。
ようやく身体が止まり、彼は残像が灼きついた目を開けた。
風景が一変していた。
彼は湖を挟んで聳える白い岩塔のひとつの上にいた。さっきまでいた砂浜は遥か眼下になり、
そこにいた筈の影使徒は虚像もろとも消えていた。
湖面から吹き上げる風が頬を撫でた。
そのとき、今の今まで身体を支えていた腕が、すっと離れた。彼はその腕を見下ろし、
それから息をするのも忘れて振り向いた。
傍らに初号機が立っていた。
見慣れた少し猫背気味の姿勢で、力に満ちた両足でしっかりと地を踏みしめ。
数秒前までの激しい動きをトレースするように、背中から長く伸びた
光の羽根が宙をゆったりとたゆたい、静止した。
声も出せなかった。
涙がこぼれかけた。彼は慌てて頬を拭い、エヴァを見上げた。エヴァは、黙って視線を返した。

150 :ひとりあそび・59:03/02/19 11:19 ID:???
「…あの」
しばらくの沈黙の後、彼は思いきって声を絞り出した。
自分でも情けない声音だったけど、エヴァは少し首をかしげて
ちゃんとこっちを見つめ、聞いていてくれた。
その途端、彼の中にあった気負いや変に凝り固まった決意があっけなくほどけた。
堰を切ったように言葉が溢れ出した。
「ごめん。…ごめんなさい。あんなこと言うつもりじゃなかった。
 ずっと後悔してた。ずっと、考えてた。捜して、謝りたかったんだ、君は何も
 悪くないのに、ひどいこと言ったって。悪いのは僕だったって」
初号機はじっとそこに立っていた。
彼はうつむいて頭を振った。違う、言いたいのはこんなことじゃない。
話すはしから言葉はどんどん見当違いの方向へ逸れていく。
と、ふいにエヴァが手を上げて言葉をさえぎった。
その手で下方を指さす。つられて湖を見下ろした彼は目を疑った。
長く伸びる浜辺は、光すら吸い込む平板な黒一色に塗り替えられていた。
その上に浮かぶ、数え切れないほどの黒白の球体の群れ。
「…一体だけじゃなかったのか」
呟いた瞬間、無数の球体に描かれた黒白の裂け目が一斉にこっちを向いた。
絶叫しかけた。エヴァに肩を押さえられ、彼はなんとか悲鳴を飲み込んだ。
同時に、かつて浜辺だった黒の領域が音もなく広がって峡谷の底に浸透した。
黒い無光の海。
聳え立つ白い岩の尖塔が、厚い岩壁が、見上げるような岩山が、次々と黒い平面の中に
沈み始める。彼とエヴァが立っている細長い岩塔もそれに加わり、ぐらりと足場が傾いた。
しかし、エヴァはまるで動じなかった。

151 :ひとりあそび・60:03/02/19 11:22 ID:???
エヴァは呆然としている彼をひょいと抱え上げると、いきなり地面を蹴った。
「うっわっ?!」
がくんと身体が揺れた。いや、揺れるなんて生易しいものじゃない。
文字通り彼は振り回されていた。それも空中で。
エヴァは光の翼も使わず、沈みゆく岩から岩へと軽々と跳び移っていった。着地すると
ぐっと屈み込み、脚全体をばねにして、放たれた矢のように大跳躍する。足場に使われた
岩には例外なく亀裂が走り、細かい白いかけらが大量に飛び散って陽光にきらめいた。ときには
ジャンプの衝撃だけで崩壊してしまうものもあった。
次々と岩を足場にし、また岩壁を通り過ぎざまに蹴って巧みに方向を変え、エヴァは
黒い影の海を飛ぶように渡った。反応しているのか、黒白縞の模様を回転させて見上げる
球体の群れを眼下に、それらとは比べ物にならない敏捷さで、そのすぐ上をかすめていく。
エヴァの動作に荷物のように振り回されながら、彼はただ息を呑んでいた。
エヴァにこんな自在な動きが可能だなんて思ったこともなかった。生身のヒトには到底不可能な
曲芸のような跳躍も、エヴァはこともなげにこなしていく。
しかし、使徒たちもただそれを見ているだけでは終わらなかった。
黒い海の上に浮かぶ球体のうち、幾つかがふっと消える。
と、それらはちょうどエヴァの進路をふさぐ形で、次々と目の前に出現した。
エヴァは構わず黒白球に突っ込んだ。彼は思わず目をつぶりかけたが、予想した衝撃はなかった。
球体の方には実体がないのだ。エヴァと接触すると、虚像は抵抗もなく消滅する。
それでも充分目くらましにはなった。こっちは落ちたら後がない。エヴァは目視を邪魔され、
わずかに動きが鈍った。それでも驚くほどの判断力でギリギリの跳躍を繰り返し、
速度を落とすことなく、ひたすら黒い領域の外を目指す。
息を殺し、いっしんに前を見つめる彼の視線の先、影の海と外との境界線が見えた。
そこから先は、元の通り白い岩盤と砂地が眩しく輝いている。
「あそこ!」
彼は小さく叫び、エヴァもかすかに頭を動かして応えた。

152 :ひとりあそび・61:03/02/19 11:28 ID:???
エヴァはほとんどミスをしなかった。精一杯うまくやったと思う。
けれど、それがそのときの限界だった。
最後のジャンプの瞬間、突然視界全体が黒と白の縞模様に覆い尽くされた。
大量の球体が視線をさえぎる。使徒たちが一気に攻勢をかけてきたのだ。
彼は、それにエヴァも、直前に見えたゴールに一瞬だけ気をとられていた。
ごくわずかにタイミングがずれた。
それで充分だった。
一気に球体の群れに突入し、いっせいに幻影が消える。わずかに遅れて視界が開ける。
目の前に、細い岩塔のひとつが迫っていた。
間に合わない。
エヴァの身体が彼の上に覆いかぶさる。きつく抱きしめられるのを感じた。
瞬間、彼とエヴァは脆い破片を撒き散らして白い岩塔にぶつかり、先端を砕いて
反対側から飛び出した。
それまで身体を支えていた勢いとリズムが消える。
ふいに、飛び散る岩の破片のひとつがエヴァの頭部を直撃した。
破片は粉々に砕け、エヴァの身体からがくんと力が抜けた。彼を支えていた腕が緩む。
白と黒の境界線のほんのわずか手前で、エヴァは失速した。
視界が傾く。風景が斜めに流れ出す。
凍りついた彼の正面に、黒い奈落が迫った。

153 :ひとりあそび・62:03/02/19 11:32 ID:???
だがエヴァは諦めなかった。
黒の海に落ちる直前、エヴァに力が戻った。再び頭部が持ち上げられ、
エヴァは宙で身体をひねって反転させると、いきなり彼を放り投げた。白い岸辺へ。
「! 何するんだ!」
叫んだときには遅かった。逆さまになった彼の視界を、エヴァの紫の身体がまっすぐに横切った。
離れていく。光の羽根が長くたなびいてその後を追う。
一瞬、時間の感覚が消えた。
何も考えられなかった。彼は自分の動きをひどくのろいものに感じながら、手を伸ばした。
指が触れた。
掴む。
唐突に、全身を衝撃が襲った。彼は白い砂の上に思いきり投げ出されていた。
ぶつけたのか、体のどこかが強く痛んだ。
「…っ」
すぐさま起き直る。
自分でも信じられなかったが、手の中にはちゃんと光の羽根の端を握り締めていた。
振り向くのと同時にエヴァが黒い海に没した。羽根を掴み直した途端、ぐんっと身体が
引っ張られる。こっちまで引きずり込まれそうなほどの勢いだった。彼は必死で踏みとどまった。
わずかに遅れて、両手に激痛が走った。ちらっと目を落とすと煙が上がっていた。皮膚の
焼ける厭な臭いが鼻をついた。
「あ…ああああっ!」
こらえきれず、声をあげた。
手のひらに血が滲み出し、ずるりと手が滑った。
このまま放してしまえば、それとも抵抗をやめて影に呑まれてしまえば
楽になれるという考えが、頭の隅をかすめた。
彼は顔を歪め、強く頭を振った。
厭だ。
手を放したくない。それだけは、絶対に厭だ。
彼はじりじりと使徒の方に引き寄せられながら、祈るように光に満ちた空を見上げた。
その空に、新たな影がさした。

154 :ひとりあそび・63:03/02/19 11:37 ID:???
頭上、新たな機影が次々と谷間に飛び込んできた。全部で九体。弾丸のように
飛来した影は彼の真上で輪を描き、突然翼を開いた。
「エヴァ…?!」
彼は小さく声を上げた。
翼を持つ白いエヴァ。どれも同じ、目のない無貌の頭部。
白いエヴァの群れはいっせいに片腕を上げた。その先に握られた黒い奇妙な形の武器が、
日差しを受けてぎらりと光った。
使徒たちに緊張が走る。
逃げるつもりなのか、虚像の球体が次々に消えていく。
だがそれはあまりにも遅すぎた。
九体のエヴァが構える。その手の中で、黒い武器の後端から先端まで二重のねじれが走り、
螺旋をなす黒い槍が現れる。
「…ロンギヌスの槍?!」
彼が叫ぶのとほぼ同時に、エヴァシリーズは真下めがけて槍を投擲した。
天地を九本の漆黒の線が結ぶ。
槍は使徒の本体に突き立ち、瞬間、黒い海が大音響をあげて痙攣した。沈みかけていた
岩塔群が、真ん中から折れて崩壊し、真っ黒い平面に縦横に地割れが走る。
途端に彼を引きずり込もうとしていた力が弱まった。
彼は我に返り、今度こそ全身の力を込めて光の羽根を引っ張った。
少しずつ、もどかしくなるくらいほんの少しずつ、光る羽根が黒の中から引き出されていく。
もう手の痛みも、空のエヴァシリーズも頭から消えていた。
やがてついにエヴァの背中が影の表面に現れた。彼はなおも歯を喰いしばった。
その瞬間、重い鼓動の音が直接頭の中に響いた。
かすかに覚えのある感覚。
突如、エヴァが自ら頭をもたげた。
咆哮。
黒い影を割って光の翼が噴き出す。まばゆい翼は槍の作った亀裂を押し広げ、
影の海を引き裂き、蹂躙し、ばらばらに切り刻んでいく。
ふいに残っていた全ての球体が黒変し、おびただしい血しぶきとともに弾け飛んだ。
ヒトと同じ赤い血が白い峡谷を染めた。
血の臭いが立ち昇る。
その中心に、エヴァがすさまじい衝撃とともに降り立った。

155 :ひとりあそび・64:03/02/19 11:40 ID:???
エヴァは血の雨の中で天を仰ぎ、高く吼えた。
彼は無言であとずさった。光の羽根がするりと指の間から抜ける。耐え切れず、
身体を折って吐いた。エヴァを直視できない。冷たい汗が点々と白い砂に散る。いくら嘔吐しても、
こみ上げる猛烈な嫌悪感は消えなかった。
谷間全体に降り注ぐ血の雨音が少しずつ弱まり、やがてやんだ。
血溜まりを踏んで近づいてくる足音がした。やっとのことで顔を上げる。
真っ赤になった初号機がそこにいた。
彼は泣くこともできずに、ただ見つめ返した。
と、墓標のように地に突き立った槍が動き、ひとりでにズッと引き抜かれて
上空のエヴァシリーズの元へ舞い戻った。
初号機が彼らを見上げる。
エヴァシリーズは使徒の血にまみれた初号機をしばし見下ろした。
それから、何の前触れもなく、彼らは翼を翻した。
白い翼の上面が強烈な日差しに光る。眩しさに目を細め、再び開いたときには、
白いエヴァの群れはもうそこにいなかった。
真昼の静寂が辺りを包んだ。
黒い影の領域は跡形もなかった。
影に呑み込まれかけていた岩々は、傾き、崩れたままの形で白い地面から突き出している。
風に砂が舞った。
残された大量の血がゆらゆらと湖に溶けていく。
ふいに、エヴァはきびすを返し、そのまま湖の中にずんずん歩いていった。水しぶきを
跳ね散らしてなおも進む。水が膝の高さを越えた辺りで、エヴァは勢いよく水に飛び込み、
沖に向かって泳ぎだした。
流れ出した返り血が、長く糸を引いてその後ろに漂った。
全身を掴んでいた緊張が解け、彼はその場に坐り込んだ。

156 :ひとりあそび・65:03/02/19 11:44 ID:???
彼とエヴァは、長く伸びた影の中に坐っていた。
光がうっすらと赤みを帯び始めている。
彼は両腕できつく肩を抱いていた。まだ少し震えがおさまらない。
さんざん泳いですっかりきれいになったエヴァは、おとなしく傍でじっとしていた。
元通り一本だけになった光の羽根が日なたに伸びて、退屈そうに
ゆらゆらと動いている。
いい加減動悸が落ち着くのを待って、彼はようやく顔を上げた。
エヴァの方を窺ってみる。
膝を立てて所在なげに坐り込んだエヴァは、さっきまで血を被っていたのが嘘のようだった。
でも、装甲のところどころには黒く固まった使徒の血がかすかにこびりつき、
外れた顎部ジョイントからは壊れたパーツがぶらさがっている。その奥から、
剥き出しの歯がわずかに覗いている。
彼は深く息を吸い込み、また吐き出した。
そして、そっとエヴァの方に手を伸ばして、血の跡の残る装甲板に手のひらを当てた。
エヴァが振り向いた。

157 :ひとりあそび・66:03/02/19 11:47 ID:???
「ありがとう。助けてくれて」
彼は乾いた喉から声を押し出した。
エヴァは困惑したように彼の手を見下ろしたが、それに触れようとも、
逆にふりほどこうともしなかった。
「…さっき、言いたかったのは、たぶん…」
彼は少し言いよどんで言葉を捜した。
実際には、そんな必要はほとんどなかったけど。
裂いたシャツを巻きつけただけの即席の包帯を通して、手のひらの火傷に、
ひんやりした装甲板の冷たさが伝わる。彼はわずかに手に力を込めた。くっと指が曲がる。
「ただ、もう一度会えて嬉しかったって、それだけなんだ。
 …本当にそれだけ言いたかった」
静かに手を下ろす。目を上げると、エヴァはまだこっちを見ていた。
光の羽根がふいに持ち上がり、一瞬だけふわりと彼の身体を取り巻いて、また流れた。
エヴァが立ち上がる。見上げる彼の前で、エヴァは振り返ってこっちに手を差し出した。
彼はしばらく黙ってそれを見つめ、それから笑い出した。
火傷した手は痛んだけど、構わずエヴァの手をしっかり掴み、立ち上がる。
そして彼は、また、白い岩の合間を歩き始めた。
ゆっくりと、足元を確かめながら。後ろからエヴァがついてきているのを、
ときどき振り返りながら。
疲れきっている筈なのに、そのくせ、このままどこまでも歩いていけるような気もした。
頭上では、早くも夕暮れの気配が空を満たし始めていた。

158 :ひとりあそび・67:03/02/19 11:50 ID:???
少しずつ光を失っていく風景の中を、ひたすら歩いていく。
登り坂が続いていた。ときどき砂溜まりに足をとられ、自然と足取りは遅くなる。
どのくらい登ったのか、ふいに力強い風が顔に吹きつけた。
彼はまばたきした。
再び、白い平原が目の前に開けていた。
峡谷を抜けたのだ。影の中から歩いてきた目に、夕闇に薄青く染まった平原の色が綺麗だった。
と、彼はふと目を凝らした。
明かりが見える。見間違いかと何度も目をこすったが、灯は消えなかった。紺青の空の下で
ちらちらとまたたいている。
「…街がある」
彼は呟いて、数歩そっちに踏み出した。
ふと気づいてエヴァを振り返る。エヴァは明かりをじっと見据えていた。
彼は動かないエヴァのところまで戻り、明かりを指さして促した。
「人がいるかもしれない。…いなくても、機械とかがまだ動いてるのかもしれないよ。
 明かりがあるならきっと電源も生きてる。行ってみようよ」
エヴァはちょっとの間彼を見下ろしていたが、かすかに頷くと、今度は先に立って歩き出した。
これまでは黙って彼の後についてくるだけで、決して先導はしなかったのに。
警戒している、というほどではないけど、何となくその背中が緊張している。
「…あそこには何かあるんだ」
彼はわずかにためらい、でもすぐに顔を上げてエヴァの後を追いかけた。
行こうと言ったのは自分だ。
暗くなっていく空の下で、街の灯はますます明るさを増してきらめいている。

159 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/19 12:06 ID:???
以上です。
読んでくれた人、お疲れさまでした。
………ほんとにご苦労さまでした。

やっと街に着きました。
あとはほとんどラストに向けて一直線。
最後の死者登場→バトルで加速→たねあかし+選択、で、おしまいです。
バトルはもう要らんかなぁ。長くなるし。書いてて一番楽しいんですけどね。

もし、冗長な文にもめげずここまで読んでくれた人がいたら、
本当にありがとう、そしてごめんなさい。
読んでくれる人がいたから、このスレ、ってか話は、ここまでこれました。
まだ愛想尽かしてなければ、どうかおしまいまでおつきあいください。

それでは、たぶん、続きます。
恐らく明日か明後日にでも。

160 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/21 02:04 ID:???
いつもありがと。
期待SAGE

161 :ひとりあそび・68:03/02/22 00:52 ID:???
それなりにしっかりと歩き続けていた足が、止まった。
ほぼ同時に夕映えの最後の光が消えた。
急速に濃さを増していく宵闇の中、街の全景が目の前に広がっている。
溜息も出ない。
それは、街ではなかった。
いや、街と呼んで呼べないこともないかもしれないと、彼は思い直した。
ただそこにヒトが住んでいないだけだ。ただの一人も。
そこにあるのは、倒壊したビル群の廃墟と、半分以上崩れた道路の残骸だった。
道路の両脇に並ぶ街頭もほとんどがランプが割れるか電気系統が破壊され、数少ない生き残りが
そこだけ妙に明るい灯をともしている。遠くから見えた明かりはこれだったのだ。
シャフトが折れ曲がった信号機が、規則正しく赤から青へと色を変えていた。
彼は軽く息を吸い込んで、また歩き出した。
傍らに追いつき、油断なく隣を進むエヴァに、何と言うことはなく声をかける。
「…電源だけはありそうだね。少なくとも」
エヴァはちょっとだけこっちを見下ろした。切れかけた蛍光灯がじじじ、と鳴きながら
その横顔を照らした。人工の光の下で、エヴァは妙に平板に、非現実的に見えた。
たぶん、彼自身もそう変わらない薄っぺらな存在に見えているのだろう。
別に、今更どうでもいい。
「でも、ここには僕以外にヒトはいそうにないね。…うん。誰もいない」
彼は歩きながら、両側に立ち並ぶ、既に完全に機能を失った建物の列を見回した。
どれも、見覚えのある形だった。
「ここは…どこなんだろう。誰が、こんなの持ってきたんだろう、ここに」
夜の静寂が辺りを圧している。
半ば開いた非常用電源プラグ収容口。半分も弾が残っていないミサイル射撃施設。
『DANGER』の文字列にふちどられた射出口の残骸。分厚い鉄扉が吹っ飛んだその下には、
真っ黒い竪穴が口を開けている。覗き込むと、それもすぐそこまで砂で埋まっていた。
兵装ビル群。
第三新東京市に襲来する使徒を迎撃するための、攻撃或いは兵器格納機能を持つ援護施設。
ヒトが暮らすためではなく、ただ敵を攻撃するだけの建物。
白い平原から風に乗って押し寄せる砂に埋もれかけながら、
ここに聳えているのは全て、それだった。

162 :ひとりあそび・69:03/02/22 00:53 ID:???
彼とエヴァは砂の舞う通りを歩いた。
背の高いビルにさえぎられ、加速した風が、容赦なく足元の砂を舞い上げる。
何個目だったか、外れた敷石を踏み越えたとき、ふいにエヴァが動いた。
すばやく彼の前に回り込む。瞬間、赤い非空間の壁が青白い光を弾き返した。
まだ何がどうなったのか把握しきっていない彼の目の前で、エヴァの背中から伸びる
長い光の羽根が威嚇するようにうねった。
と、エヴァは弾かれたように走り出し、一気に跳んで道路の向こう側の何かを
路面に押さえつけた。またさっきと同じ光がほとばしるが、光線はエヴァを大きく外れ、
通りの先のビルの壁面を削り取っただけだった。派手な音を立ててコンクリート片が落下する。
エヴァの下の何かはしばらく抵抗していたが、やがて静かになった。
エヴァがこっちを振り向く。彼は駆け寄った。
「こいつ…」
無意識に声に怒りが混じった。

163 :ひとりあそび・70:03/02/22 00:54 ID:???
ジオフロントまで攻めてきた、あの最強の使徒だった。押さえつけるエヴァよりひと回りか
ふた回りは大きく、薄いしなやかな鋼板のような両腕は、どちらもエヴァの腕に
絡め取られている。使徒は仮面のような顔をこちらに向け、目に当たるらしい黒い穴で彼を見た。
彼は無言でその表情のない顔を睨み返した。
その瞬間、使徒がATフィールドを一閃させた。エヴァの身体全体が震える。
わずかな間の後、エヴァの背中の”動力羽根”が付け根の辺りから断ち切られて宙に飛んだ。
吹っ飛んだ羽根は闇の中でまたたき、消える。エヴァは動力源を絶たれ、がくりと頭を垂れた。
使徒が力を失ったエヴァの手からするすると両腕をほどく。攻撃してくるのかと
身構えたが、使徒は逆に長い腕でエヴァを包み、静かに持ち上げた。
「…このっ、何する気なんだ!」
思わず、後先考えずに使徒の前に立ちふさがった。殺されるかも、と思ったのは動いた後だった。
どっちみちエヴァが動かなければ生き残れない。握りしめた拳の中で、爪が手のひらに喰い込む。
が、使徒は彼を緩慢に見下ろしただけだった。
ほとんど無関心同然の視線。彼の無力さなど充分過ぎるほどわかっているとでも言うように。
恐怖でいっぱいになりかけていた頭に血が昇った。
そのとき、声が彼を呼び止めた。
他人の声。ここに来てから初めて聞く、自分のもの以外の、肉声。
それ以外の全ての音が消えた。
彼は一瞬呼吸を忘れ、それから震えだした。どうしても振り向けなかった。
砂を踏む足音が、背後からゆっくりと近づいてきた。

164 :ひとりあそびしてる人:03/02/22 01:07 ID:???
>159で明日か明後日と言いつつ約1時間遅れ。
できない約束はしない、つもりだったのに…鬱。
っていうかバトルはやめるんじゃなかったのか自分。

>>160さん、こちらこそ本当にありがとう。
期待に少しでも(ホントに少しかも)応えられるよう、頑張ります。
それから、SAGEもありがとうございます。
ひらがな、小文字、大文字、ときて、次は何かなと思ったり思わなかったり。

さて、街に到着です。
この後、案内人、兼、最後の死者、の登場となります。
唐突ですがそいつを誰にするか、最初に今回のこれを読んで
書き込んでくれる人に選んでもらおうと思います…
先着一名様。

選択肢(2択):初の実体アリ死者は?
 1.渚カヲル(よく喋ってくれそうだという利点アリ)
 2.綾波レイ(使徒とは別系統っぽいから…)

週明け月曜日には必ず来ますので、それまでに誰かお暇な方に
選んでおいて頂けたらなぁとか。…生意気すんません。
誰も読んでなかったらそれはそれでまた一興というもの(負け惜しみ)

それでは、たぶん、続きますので。

165 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/22 02:12 ID:???
ついさっきだったんですね。
読ませてもらいました。次も期待sage

166 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/22 02:13 ID:???
……すみません、私には決められません(汗

167 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/22 02:18 ID:???
……………決めようと思ったけどやっぱりダメだぁ!
綾波にしてもカヲル君にしても面白そうだし。
何らかの形で両方出してもらえれば幸いです。

168 :ひとりあそびしてる人:03/02/24 23:54 ID:???
………すみません…来たは来ましたが続きは無理っぽいです………
明日は書きます。今度はホントのホントに必ず。

>>165〜>167
読んでくれて、書き込んでくれて、本当にありがとうございました。
で…未定っすか(w それは予想してなかった…
両方出せるようひねくってみます。ご期待に添えれば嬉しいです。
が……すみませんが…明日(昼間?)までしばしお待ちを…

169 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/25 02:00 ID:???
>>168
わかりマシた〜
期待sage

あせらずにおねがいしまつ。

170 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/26 05:55 ID:???
………また無理でした………
リアル世界の方でちょっとゴタゴタが。
しかもこのあと泊まりがけで出かける用事が入ってまして。
待ってくれていた方(いたら)本当にごめんなさい…
帰ったら書く、つもりですが、なんか「○○日には書きます!」とか
予告しておくとまた約束破りそうな気がするので、未定、ということに
しておきます。
鬱駄死悩…
ていうかとりあえず旅先で吊ってきます…

171 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/26 16:05 ID:???
>>170
イ`
とりあえずみつぎものでつげんきだしてください
ttp://cool.s3.x-beat.com/cgi-bin/Inter/data/Phantom_0006.lzh

172 :ひとりあそび・71:03/02/28 15:49 ID:???
膝の震えはいまや立っていられないほどになっていた。
何のせいなのか、自分でもよくわからなかった。
怖い? いや、怖いんじゃない。罪悪感、でもない。
背後の足音は彼のすぐ傍で止まった。
振り向けなかった。
彼は、正面で初号機を抱えている使徒をかたくなに睨み続けた。
気配は少しためらうようにそこにとどまっていたが、やがてまた歩き出し、
今度は彼の隣に立って一緒に使徒を見上げた。
「初号機なら心配要らないよ。何もしない」
声は、さっきと同じことを、もう一度ゆっくり繰り返した。
「動きを止めたのは悪かった。これほど攻撃的だとは思っていなかったからね。
 先に手を出したのはこっちだから、これはこっちの落ち度ではあるんだけど」
その言葉を証明するかのように、使徒はエヴァに全く手出しをしなかった。動かなくなった
エヴァを抱えたまま、その場でじっと待っている。
何を待っているか? そんなの考えるまでもない。
彼の隣にいる、死者だ。
彼はがたがたと全身を震わせながら、ただ立ちつくしていた。
すぐにでも顔を見たい、でも見られない。話をしたい、けれど声が出ない。
今更そんな資格なんかない。
「…殺してしまったから?」
声がした。彼はびくりと震え、弾かれたように振り向いた。
そこにあるのは、冷たい闇ではなかった。
懐かしい顔が彼を見ていた。

173 :ひとりあそび・72:03/02/28 15:51 ID:???
彼はかすれた声で名前を呼んだ。
一度こぼれた名前は止まらなかった。何度も、何度も彼はその名を呼んだ。
が、その相手はふっと視線を外し、笑みを消した。
「殺したことを悔いるのなら、僕のことだけじゃなく、他の使徒全てに対しても
 同じ気持ちを持たなきゃ。彼らと僕は何も変わらない」
「…違うよ」
思わず言い返した。
「全然違うじゃないか。カヲル君はカヲル君で、使徒は…使徒だよ」
「違わないさ」
赤い目が再びこちらを見た。
「カタチなんか関係ない。彼らも僕も、そして君も、同じATフィールドに閉じこもった
 閉塞した存在だよ。本質的には何ひとつ違わない。
 …君は、僕がたまたまヒトの姿をしているからそんなに罪悪感を覚えるのかい?
 ヒトと同じカタチだから、言葉を交わし、コミュニケーションできるから?
 だとしたら、それは大きな勘違いだよ」

174 :ひとりあそび・73:03/02/28 15:53 ID:???
彼は信じられない思いで黙った。
彼があの頃すがった声は、驚くほど冷たかった。
奇妙な苛立ちが募っていた。それが怒り、そして後ろめたさであると気づくのに、少しかかった。
確かに彼は、使徒を何体倒しても、そのことにはほとんど何も感じていなかった。
使徒は敵。突然やってきて降りかかる熱い火の粉。
それを倒すために戦って、自分たちの身を守って、それのどこが悪い?
誰も悪いって言わなかった。誰も止めなかった。むしろ、殺したらほめてくれた。
皆がいいことだって言ってたんだ。
「使徒を倒すことを君らが何て言っていたか、覚えてるかい?」
いきなり訊かれて、彼は面食らった。慌てて思い出してみる。ミサトさんの言葉。
使徒殲滅を最優先事項とします。
「…センメツ」
小さく呟くと、赤い目は彼を逸れ、初号機を見た。
「そう、殲滅。皆殺し。あとかたもなく滅ぼすこと。
 その意味がわかるかい?」
彼は痛み始めた頭を押さえ、首を振った。
声は容赦なく告げた。
「使徒は一種一体。そのありようが単体だろうと群体だろうと変わりはない。
 一体が、そのままひとつの可能性でもあったんだ。それぞれ、別の形のね。
 それを…ひとつの可能性、そしてそこから展開し得た未来を、丸ごと滅ぼしていたんだよ。
 殲滅っていうのはそういう意味さ。
 君らが使徒襲来のたびにやっていたのは、人類を皆殺しにするのと全く等価な殺戮だったのさ」

175 :ひとりあそびしてる人:03/02/28 16:00 ID:???
お久しぶりです、っても二日しか経ってないんですね…
住んでる県内から出たの、随分久しぶりなので、
なんかえらく時間が経った気がします。

とりあえず続きでした。
カヲルの方になりました。
綾波も出てくる…かな………未定…(鬱

>>171さん、丁寧にどうもありがとうございました。
ですがウチのPCでは開けられませんでした(対応ソフトが…)
ソフトの準備できるまで楽しみにしときます、ってことで…
もう少し生きてみますか。
少なくともここを終わらせるまでは、確実に。

それでは、中途半端ながら、今回は一応ここまでです。
次に来る(文章が脳内降臨する)のがいつになるかは、正直未定です…
しかし。
たぶん、続きはしますので。

176 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/01 19:08 ID:???
>>175
あれ…すみませんでした。
そういうことならzipで上げ直すのも気が引けますので、第二弾(w
ttp://cool.s3.x-beat.com/cgi-bin/Inter/data/Phantom_0009.zip
前のもこんな感じなのですが…お嫌いでなければどうぞ。

(´-`)ノ旦~ マターリ ユックリ アセラズニ。

177 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/03 04:44 ID:???
とかいってもしマカーのひとだったらどうしようと心配に…
だとしたらよけいごめんなさい。

178 :ひとりあそびしてる人:03/03/06 02:28 ID:???
丸五日経過…すみません…

>>176、>177
ああ、わざわざありがとうございます! 今やってみました!
…見れました!! すんごく癒されますた。本当にありがとうです。

   ⊂(。Д。⊂⌒`つ ←最初の数枚で萌え死んだ自分(猫大好き)

明日、じゃなくて今日の昼間は根性で来ようと思います…

179 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/08 14:08 ID:???
ほぜんしてみる

180 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/12 23:14 ID:???
ほぜーん♪

181 :山崎渉:03/03/13 17:03 ID:???
(^^)

182 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/14 05:40 ID:???
↑縁起でもない…(  #


183 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/15 18:34 ID:???
ほしゅる

184 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/18 11:11 ID:???
ほしゅほっしゅ

185 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/21 18:54 ID:???
ほし

186 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/25 01:32 ID:???


187 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/25 02:39 ID:???


188 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/26 02:03 ID:???
>>187
ホカニモイター!

189 :178(一人称変更済):03/03/27 15:56 ID:???
……………いっかげつ……経過…か……
なにも書かずに……

そりゃ、リアル世界・この板内合わせていろいろあったはあったけど、
それでここをほったらかしていいという理由にはなるわけもなく。
……

ずっと保守していてくれた>188さん、本当に感謝しています。
たくさん並んだ保守レスを見て、泣きそうになりました。
…申し訳ないという気持ちの方がずっとずっと強いけど……
無数のごめんなさいと、そしてありがとうを贈ります。ウワァァァァアアン


……
…まだ、何か書いてもいいですか…?
ていうか…書かなきゃ駄目ですね。
読んでくれる方のため、というのは当然だけど、そうではなく、
むしろ誰のためでもなく、物語には終わりを。
劇場版見て以来、俺は「完結しない話」が大嫌いになりました。
だからこの話、このスレのシンジ君のひとりあそびには、きちんと結末をつけます。

いい加減、ラストに向けて頑張ろうと思います。
長らく待ってくださった方、ごめんなさい。もう少しです。
俺の結末を気に入って頂けるかどうかは、また別の問題になりますが、ともかく書きます。
まずはご挨拶まで。
失礼しました。





…ていうかなんであんなに続けにくい引きにした>>174の俺!!!!(泣

190 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/28 00:53 ID:???
>>189
気分が乗らないうちは、書けなくても仕方ないんです。
だから気にせずに。
あと、>>187さんにもお礼を言ってくださいな。

191 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/30 02:50 ID:???
のこのことまた戻ってきました…

>>190
…すみませんでした。本当にごめんなさい。
それから>>187さん、遅れたけど、保守ありがとうございました。
無視したような形になって申し訳ないです。

とりあえず続きを。
なんか書いてて自分でも訳わからんになってきましたが…書かないよりは
後日悲鳴をあげつつつじつまを合わせます、ということで…
逃げ腰になりつつ、…よろしければおつき合いください。

192 :ひとりあそび・74:03/03/30 02:51 ID:???
何を言われたのかわからなかった。
投げつけられた言葉は、しばらく何の意味もなさずに頭の中で空転していた。
それから、いきなり理解がやってきた。
ほとんど痛みに近い、衝撃。
忘れていたようでも、本当は厭になるほどはっきり憶えている。刺された死体。撃ち抜かれた死体。
爆発で原型をとどめないほどバラバラになった死体。破裂した死体。喰われた死体。
使徒たちの死体。そう、記号だった“敵”が死者になる。
絶対だと思っていたゲンジツが、一瞬にして逆転した。
街を守って、綾波を守って、アスカを守って、生まれて初めての達成感だって感じられた、
その結果がただ、他の誰かを殺して自分たちが生き残ったって、それだけのことだった?
唇が震えた。
…私たち人間もね、アダムと同じ、リリスと呼ばれる生命体の源から生まれた、
18番目の使徒なのよ。他の使徒たちは別の可能性だったの。ただ互いを拒絶するだけの、
悲しい存在だったけどね。
また、昔聞いた言葉が浮かんだ。あのときはただ上滑りする単語の連なりにしか
聞こえていなかったことが、やっと意味のあるものになって、胸に沁みた。
頭の中で、何かが、弾けた。

193 :ひとりあそび・75:03/03/30 02:52 ID:???
感覚が消える。
風も、寒さも、痛みも、何ひとつ感じられない。
そろそろと両手を持ち上げて見つめる。そのままゆっくりと顔を覆って、彼は世界から逃げた。
もう何も見たくない。聞きたくない。皆なかったことになればいいのに。最初から全部。何もかも。
あの街に呼んだ父さんを呪った。
怖い目に会わせて、戦わせて、命令するだけで何も説明してくれなかったくせに、
ただの話だってほとんどしてくれなかったくせに。なのに最後は、こっちに
全部背負わせていなくなるなんて、そんなの身勝手すぎる。
父さんはそれでいいかもしれないけど、でも、こっちはまだ生きてるし、生きなきゃならないのに。
父さん一人のために、世界が終わる訳じゃないのに。
彼はきつく顔を覆ったまま、気持ちが静まるまでじっと耐えた。 
死者と話したときに感じていた、あの穏やかな気持ちはもうかけらもない。でも、憎むことも
できそうになかった。今更どうにもならないことくらいはわかっていたから。
憎めば楽になるかもしれないけど、それができない。気持ちをぶつける先がない。
出口だって、ない。この変な世界と同じだ。
だったら、ここにいるしかない。
彼は凍りついた。
ふいに、風と砂の匂いが戻った。目が覚めたときのように、閉じていた感覚が外へ開く。
こわばった指を引き剥がすと、夜が広がった。足元で風が渦を巻く。
彼は怯えを押さえつけて顔を上げた。
どうしようもなく優しくて、同じくらい悲しい顔がそこにあった。責めている顔ではなかった。
彼は両手を下ろし、その存在に向き直った。
逃げる場所なんか、もうどこにもない。

194 :ひとりあそび・76:03/03/30 02:54 ID:???
「…僕は、何もわかってなかった。何もわからずにエヴァに乗って、戦って、
 いつもなんとか生き延びるだけで精一杯だった」
彼は少しずつ、途切れ途切れに話し出した。
相手の顔をずっと見ていられなくて、ごまかすように傍のエヴァを見上げた。初号機は
使徒の腕に支えられて、玩具のように力なくそこにあった。
「一度だけ、アスカに話してみたことがあるんだ。なんで使徒が攻めてくるんだろうねって」
「…彼女は、そのときなんて言ったんだい?」
彼ははっとして視線を戻した。赤い目が細められ、初めて会ったときと変わらない
穏やかさで、返事を待っていた。彼はうつむいた。
「アスカは何の疑問も持ってなかった。攻めてくるんだから、反撃するのが
 当たり前だって。そのあと、三人…あ、アスカと綾波と僕のことだけど、
 その三人でも話をしたんだ。でも、僕は大したこと思いつけなくて、結局わからなかった」
何となく、周りのビルを見上げた。今はほとんど壊れて、砂に埋もれかけているこの街も、
あのときは星の光をかき消すほど明るかった。
「それから、いろいろあって…僕は、その頃、もう考えるのをやめてた。エヴァに乗ることが、
 どんどん辛くなってたから。敵は敵だと考えれば、…無理にでも目的を作っちゃえば、
 少しは楽になるんじゃないかって、そう思ってた」
言葉を切って、彼は少し相手の反応を待った。
けれど、相手は穏やかな顔のまま、黙って彼を促しただけだった。
前にも一度、こうやって話を聞いてもらったときのことが頭をかすめ、一瞬、刺すように
胸が痛んだ。彼は耐え切れず、また目を逸らした。
「その少しあとに、アスカと綾波が危なかったことがあった。僕はどっちも
 助けられなかったけど、でも、そうしようとはした。そのときは、エヴァに乗れることは
 なんでもなかった。二人を助けられる力があるってことだったから。
 …でも、君が来た後、また僕は使徒と、エヴァに乗る意味がわからなくなった」
彼は手にわずかに力を込めた。押さえ込んでいた声がまた出てきそうになる。
何故、殺した。
「エヴァに乗ることだけじゃなくて、他のどんなことも厭になって、何もしたくなかった」

195 :ひとりあそび・77:03/03/30 02:54 ID:???
「けれど、君はまたエヴァに乗った」
静かに声が言った。
「それもただ乗るだけじゃなく、自分の意思でエヴァを動かした。それは何故だい?」
責めるのでも問いただすのでもない、全く悪意のない声。彼は軽く息を吸い込み、
口を開いた。その声の優しさに安堵している自分が、たまらなく厭だった。
「いろいろあると思う。…アスカに会って、まだ未練がましく助けてもらおうと
 したのかもしれないし、単に他にすることがなかったからかもしれない。
 でも、僕にもう一度エヴァに乗れって言ってくれたのは、ミサトさんだった。
 だらしない僕を叱って、怒鳴って、必死で説得してくれて…それから、
 償いは自分でやれって、教えてくれたんだ」
彼はぐいっと顔を上げた。横に振れそうになる視線を、まっすぐに相手に向ける。
自分で、顔が歪んでいるのがわかる。きっと情けない顔をしているんだと思う。傷つけられるのが
怖くてたまらないという顔。
赤い目から目を逸らさずに、彼は息をつめて言った。
「…償いを、したいんだ」
吸い込まれそうに澄んだ赤い目は、まばたきもせずに彼の目を見つめ返した。
そのまま、何秒かが過ぎた。
風もやんで、夜の街は静かだった。砂の流れる音だけがときどき響いた。
駄目かもしれないと思い始めたとき、ふいに答えが聞こえた。
「償いなんて僕らは必要としない。ただ、知っていてくれればいいのさ」
「でも…!」
「君は罰が欲しいのかい? …ここにいる、それだけで充分なのに」
彼は息を呑んだ。
「…ここにいても、いいの」
最後の死者は、変わらない笑顔を彼に向けた。
「いいんだよ。君がそう望むならね」

196 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/30 03:00 ID:???
……………ああー……
真面目にやれ俺…
読んだ人…なんか…ごめん……

鬱駄死悩…


いや…続くとは、思う…
失礼しました…

197 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/01 00:10 ID:???
>>196
なんか、かえって気に病ませるような事を言ってしまったような…
すみませんです。
その…人がなんと言おうと自分は自分なんです。
もっと堂々とふるまっていいんです。
元気出してください…ttp://cool.s3.x-beat.com/cgi-bin/Inter/data/Phantom_0030.zip

198 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/03 12:35 ID:???
!!!
数ヶ月前は、ただのクソスレだったのに!!
なんかFFスレになってる!!
しかも結構面白いし!

>一人遊び 中の人    がんがれ!応援してるぞ!

199 :ひとりあそび中の人:03/04/05 00:42 ID:???
お久しぶり、です。約一週間ぶりですか…
少しマシになったんだろうか、俺。

続きが脳内発生したので、書いてみました。

来てくれて、読んでくれた人、本当にありがとうございます。
誰かが読んでくれたなぁとわかるだけで、めっちゃめちゃ嬉しいっす。
もう少し、です。

>>197さん、いつもいつもありがとう。
………っていうか… 猫 マ ン セ ー ! ! !
すんごく癒されますた。
ええと、俺は結構気分屋なんです、ってぇか躁鬱の落差が激しいのかもしれません。
勝手に沈んで、勝手に復活しますから、どうかお気になさらずに。
気遣ってくれてありがとう。本当に嬉しいです。

>>198さん
いらっしゃいませ、とか言ってみます。
読んでくれてありがとう! しかも面白いと言ってくれるとは!(感涙
確かに…俺がこのスレを乗っ取ってから、はや数ヶ月。
もうすぐ半年経っちゃいますね。…ペースえらく遅いな俺。
今月中には完結、の、予定。
俺はしょっちゅう約束破るので、あんま信用はおけませんが。
できれば最後までおつき合いください。

では、少しですが続きを。

200 :ひとりあそび・78:03/04/05 00:44 ID:???
「ここは…どこ」
踏みしめる足の下で、白い砂がきしむ。
都市はゆっくりと砂に侵食されていた。ちょっとした隙間は残らず砂に埋められ、
風の吹きつけない物陰には大きな砂の吹き溜まりができていた。通り過ぎざまに覗いた
ビルの内部は真っ暗で、動かない暗闇の、そのずっと奥の方から、さらさらと
砂の流れ落ちる音が聞こえた。
「死者の住む地にして、死者そのものでもある、そういう場所さ。
 僕らがいるからこの場所は存在している。僕らを支えるためにのみ存在を許され、
 僕らという限られた精神の外部には存在し得ない、脆弱で不確定な世界だよ」
幾つものビルの前を過ぎた。電源供給ビルは外壁の一部が崩れ落ちていて、中から
予備の外部電源プラグが垂れ下がっていた。
彼はその下を通り抜けながら、黒いシルエットになったプラグを見上げた。
「それじゃ、僕ももう、死んでるのか」
ケーブルの絶縁素材はあちこち裂けていた。はみ出した導線がひどく錆びついている。
倒れて散らばっている歩道のガードも、道路の亀裂から覗いている
水道やガスなんかのパイプも、半壊したビルの壁から突き出した折れた鉄骨も、
同じようにぼろぼろに腐食して、薄く砂の膜を被っていた。

201 :ひとりあそび・79:03/04/05 00:44 ID:???
「…たぶん、そうなるんだろうね」
彼は通りを歩きながら、何度か後ろを振り返った。初号機を抱えた使徒は、
おとなしく彼らの後ろからついてきていた。鋼のリボンのような、薄いけれど強靭な腕が
しっかりとエヴァの身体を支えている。
こっちと視線が合っても、使徒の仮面に似た顔はまるで無関心だった。逆に気が引けて、
彼はそそくさと砂の舞う道を急いだ。
「たぶんって、…違うの?」
ときどき手に触れるビルの表面は、砂まじりの風に長い間さらされて、すっかり磨耗していた。
彼はしばらく手の先を壁に滑らせながら歩いた。剥がれた塗装の名残か、ざらざらした感触が
指に残る。
夜で良かったのかもしれない。昼間見たらここは、それこそ廃墟にしか
見えなかっただろう。昔、確かに住んでいた街なのに。
「君一人だったら迷わずそう確信したんだろうけど、初号機が一緒にいるからね。
 それで、僕にもよくわからなくなった。初号機は死者にはなり得ないんだ。
 永遠への箱舟として使われた、唯一のエヴァだからね」

202 :ひとりあそび・80:03/04/05 00:45 ID:???
前を行く死者の背中は、ほのかな光に包まれているかのように、ぼんやりと白かった。
彼はときどき目をこすった。確かにそこにいるとわかっていたけど、
少し目を離したら、今にも消えてしまうんじゃないかという根拠のない不安が
つきまとって離れなかった。
軽い足取りで砂を渡ってゆく後ろ姿は、あまりにも記憶と変わらない。他のヒトとも
違わない。話しかけてくれるし、笑いかけてもくれる。ここにいてもいいと言ってくれる。
初号機とは、違う。
押しつぶされるほどの後ろめたさを感じながらも、彼ははっきりとそう思った。
いなくなられたら、今度こそ狂ってしまうだろう。
半ば無意識に手を伸ばしかけたとき、ふいに死者が立ち止まった。
彼は弾かれたように手を引っこめた。
振り向いた死者は、不思議そうにこっちを見た。彼はどぎまぎして目を逸らし、口の中で、
なんでもないんだ、と途切れ途切れに呟いた。頬が熱かった。夜でよかった、と心底思った。
と、背中を軽くつつかれた。
いつのまにか、使徒がすぐ後ろにいた。使徒は、初号機を抱えた腕の先を少しほどいて、
指さすように前方を示した。
慌てて向き直ると、足跡の続く先に、ビルの入り口があった。
中は墨で塗り潰されたように暗い。暗闇、というよりは視界の欠落そのものが、
ぽっかりと口を開けている。
別に暗いところが苦手な訳でもないけど、さすがにここまで何も見えないと不安になる。
何となく躊躇していると、また背中をつつかれた。さっさと行け、ということらしい。彼は
自分の倍くらい身長のある使徒を見上げ、黙って溜め息をついた。

203 :ひとりあそび・81:03/04/05 00:45 ID:???
思いきって踏み込んでみると、ビルの中は思ったよりずっと明るかった。入り口から
死角になるところに高い窓があって、そこから外の光が差し込んでいる。知らないうちに
昇っていた、月の明かりだ。
青い光の領域の端に、狭い鉄筋の階段があった。その前で、死者が彼を待っていた。
「少し登るよ。足元に気をつけて」
頷いて、彼は後に続いた。鉄板の段の一段一段にも、薄く白い砂が積もっている。砂の鳴る音が、
階段を登る二人分の足音に混じって、がらんとしたビルの内部に響いた。
どのくらい登ったのかわからなくなってきた頃、月の光とは違う、もっとはっきりした
明かりが視界に飛び込んだ。目を細めて登りきると、そこが終点だった。
彼は軽く息を吸い込んだ。
そこは、青白い電源に照らされた、小さな部屋になっていた。
ここは元は、予備のライフルか何かを収納しておくビルだったのだろう。不規則な形の
空洞が建物の中心を貫いて、一番上まで続いている。さっきまで登っていた階段は恐らく作業用。
今いるここは、ライフル射出時にビルの表層が稼動するための、遊びというか
吹き抜けのような空間らしかった。そこをきちんと片付け、吹きさらしにならない隅を選んで
砂をきれいに掃き出し、どこからか電気を引いて部屋のようにしつらえてある。
隅には毛布が積まれていた。
「街のあちこちから見つけてきて、何とか形にした。結構かかったよ」
死者は、彼に適当に坐るよう言うと、壁の棚のところに行って何か捜し始めた。
彼はしばらく部屋を見回し、椅子替わりらしい箱のひとつに腰を下ろした。頭上を見上げると、
ビルの可動パーツの隙間から斜めに月の光が差し込んで、高い天井を淡い青に染めていた。
急に眠気が襲ってきて、彼はほんの少しだけ瞼を閉じた。

204 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/05 00:48 ID:???
という訳で続きでした。
なんかもう少しダラダラして、その後ちょい騒ぎます。
それが済んだら、エンディング。
…と言ってもそこまでが長いんだろうな(軽鬱

それでは、たぶん、続きます。

205 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/06 01:30 ID:???
新しいのキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
余裕持ったペースで。期待してまつ。

206 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/10 01:17 ID:???
ほっし

207 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/14 00:16 ID:/75M4wFD
僕はageていいんだ!!

208 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/14 03:54 ID:???
>>207
殺す

209 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/16 07:26 ID:???
ぽじゅん

210 :山崎渉:03/04/17 11:36 ID:???
(^^)

211 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/18 09:05 ID:???
さげほしゅ

212 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/20 00:40 ID:???
ほしゅします

213 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/22 10:07 ID:???
りーん

214 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/25 13:09 ID:???
ほしゅでつで

215 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/27 01:45 ID:???
にゅ

216 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/28 21:32 ID:???
ほし

217 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/30 00:46 ID:???
いってつ

218 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/01 09:26 ID:???
>>217
ヽ(`Д´)ノ

219 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/01 21:12 ID:???
保守します。


220 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/03 11:09 ID:???
えう

221 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/05 12:11 ID:???
そろそろほしゅ

222 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/07 12:12 ID:???
にゃ

223 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/08 20:59 ID:???
ほしゆ

224 :ひとりあそび中の人:03/05/10 00:06 ID:???
………お久しぶりです…
…ごめんなさい……ほんと…どうしたらいいのか…

>>205-223の方々、いつもいつもありがとうございます。
(特にこまめに来てくださっているおひと方。ホントにありがとうです)
ずっと書く側が逃げてる(理由はどうであれ書かなきゃ逃げてるのと一緒)のに、
……すみません。

今夜はちょっと無理なのですが、これから先を続けるに当たって、ここを見ていらっしゃる方に、
ひとつ、お断りがあります。
先日、俺の中でこの話はちゃんと完結し、シナリオ(藁)みたいなモノ、メインの台詞とか
シーン設定とかをつらつら書き連ねたものが一応できあがりました。
これからはそれを文章の形に落とし込んでいく訳ですが、
あんまりしつこい描写とかをせずに、短くまとめていけば、結構早く(?)完結できると
思います(分量が極端に少なくなるって意味ではないです)
たとえば余計なバトルを少な目にする、俺の特徴である過剰な情景描写を切りつめる、等。
現在エヴァ板内でまだ見られるスレにあるうち、俺が「すごいな」と思ったFFは
これをきっちりやって、話に勢いと迫力を出すことに成功しています。
逆に描写をきちんと積み重ねていくことで、とてもイイ雰囲気を作りだしている
書き手さんもいらっしゃいます。
俺は当初、後者の方法でじりじりつらつらやっていくつもりでした
(もともと書くの遅いっていうのもありますし)
が、このままのペースだと終わるのが下手すると半年後とかになってしまいます(w
一身上の都合により、俺はそんなに長くこの板にいることができません。
よって、俺のこの(話の展開上の)タラタラペースがここの特徴でありキモだと
思っている方(もしいたらの話です)にはホントに申し訳ないんですが、
少し、飛ばしてみようと思います。
飛ばすと言っても、可能な限り、手を抜く気はありません。
>189でほざいた通り、まずはとにかく完結を目指そうと思います。

長らくお待たせしてしまった方々、本当にごめんなさい。
まずはご挨拶まで。失礼しました。

225 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/12 20:40 ID:???
大丈夫です、がんがんやってください!

226 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/14 23:41 ID:???
ちうわけでほしゅ

227 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/16 19:21 ID:???
ほしゅー

迷ってないだろうか…

228 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/16 19:21 ID:???
急に移転したから

229 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/19 21:22 ID:???
やべえ、保守

230 :ひとりあそび中の人:03/05/20 17:02 ID:???
………そして10日が経過…
……ちゃんとエンディングまで終わらせてから、自害します…

>>227-228
ご心配、ありがとうございました。確かにしばらく迷ってました(w いつのまに、ですた。
2ch自体のBBS一覧からようやくたどりつけた次第です。

いつも保守してくださっている方、そしてこのスレに一度でも来てくださった方、
本当にありがとうございます。
さっさと続きをお目にかけられなくて、非常に申し訳なく思っています。
某スレのごたごたが片付いたら、すぐにでも。
今の状況だとそう遠いことではないと、思っていま…思いたいです。

何も書かないお詫び、になるかどうかわかりませんが、>224で挙げた
俺が(あくまで俺の主観で)文句なくすごいと思った、この板内にあるFFを紹介します。
もうご存知のものばかりかもしれませんが、そのときは…すみません。
 ・スピード展開、余計なことやらないでイイ感じ
  「俺をシンジと呼ぶな!」スレ内 
     名無しSS書きさんによる5篇(一応無題)全て完結済み、進行中?1篇
     逆行、EOEアフター、傑作揃い。特に一番最初の一篇は神。非常にレベル高し。
  「2chのエヴァFFを語ろうよ」スレ内
     ちゃぷちゃぷさんによる”ちゃぷちゃぷシンジ”1〜4 完結済み
     1〜3は一発オチ、4で壮大に加速。赤い海のほとり、もうひとつの終局。ないしは神話。
 ・じっくり積み重ねられてゆく良作
  「クローン人間は温泉ペンギンの夢を見るか?」スレ内
     ぽちさんによる”クローン人間は温泉ペンギンの夢を見るか?”進行中
     もう一年以上続いている息の長い話。各シーンはそう長くないのに
     どれも非常に印象に残る。完成度は並みじゃないです。現在クライマックス。

直リンはしたくないので、読んでみる方は「スレッド一覧」内にて検索かけてみてください。
一応、検索の方法は板のトップに。このレスからタイトルをコピペすると早いと思います。
それでは、また。

231 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/22 14:52 ID:???
ほしゅ

ごたごた…大変そう

232 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/24 19:07 ID:???
ほしゅでつ

233 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/27 00:13 ID:???
ほしゅ

234 :山崎渉:03/05/28 13:43 ID:???
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉

235 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/29 18:13 ID:???
あー……

236 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/31 03:58 ID:???
えし、ほしゅ

237 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/02 16:11 ID:???
ほしゅー

238 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/04 17:07 ID:???
ほsh う

239 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/07 03:56 ID:???
ほしゅで

240 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/09 04:01 ID:???
えいや

241 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/11 19:22 ID:???
ぽしゅ

242 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/14 04:28 ID:???
ほしゅ!やべ

243 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/15 19:14 ID:???
初めて此処の存在を知ってざっと読んでみた
リツコさん所でぶわ、と涙が。別に好きなキャラでもなかったのに
てなわけで、保守ります。

244 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/16 20:29 ID:???
ほしゅにん

245 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/18 23:41 ID:???
ぽし

246 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/22 05:28 ID:???
初めてみた。
とても面白かったのでほしゅる。

247 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/24 03:02 ID:???
ごめんでつ
旅に出てて今帰ってきまつた

ほしゅ

248 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/26 18:15 ID:???
ほしる

249 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/27 22:09 ID:???
ほしゅほしゅ

250 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/29 14:17 ID:???
好きです。

ほしゅ

251 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/30 01:23 ID:???
ほしゅー

252 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/02 03:00 ID:???
ほし

253 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/04 03:08 ID:???
ほしゅ

254 :******************************************************************************名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/08 01:50 ID:???
254 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:03/07/06 03:40 ID:???
ぽしゅでし

いっこしかなかったけどw
そしてほしゅ

255 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/09 17:33 ID:???
保守

256 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/10 05:41 ID:???
ほしゅほしゅ

257 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/12 05:36 ID:???
ほしゅ

だー―――――――――――

258 :山崎 渉:03/07/12 08:25 ID:???
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|::::.| . 山崎渉ニュース (^^) | .|_  ┃..と〜けたこおりのな〜かに〜♪ ┃
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259 :山崎 渉:03/07/15 11:37 ID:???

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄

260 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/16 13:52 ID:???
ほしゅしにきたでつ

261 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/18 01:16 ID:???
ほsう

262 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/20 08:49 ID:???
ほぜんで

263 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/22 08:54 ID:???
ほぜんほしゅ

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